第21話 上を目指して下を這う

私の剣道仲間でヨッシーって言うのがいたんですよ。

彼は小4の時から剣道をやっていてめちゃ強かった。

頭も良かったです。


彼は高校進学の時、高専狙ってたんですが・・

楽勝の成績でした。

剣道ばっかりやってて塾も行ってないのに、彼の

親父さん頭のいい人だったから、DNAですかね・・


ところが入試直前になって県内トップの進学校に

受験を変えたんですよ。

理由はその高校に有名な剣道の先生が赴任したか

らなんです。


無理じゃあ無いかと皆は思ってたんですが3か月

ほどもう勉強して合格したんです。

剣道の為にね(笑) 剣道一直線ですよね(笑)


で・・

トップの進学校に入ったヨッシーは夢中で剣道に

励みましてね、当然成績が最下位ぐらいで・(笑)

国立大の入試に失敗して浪人になったんです。


将来の進路について私も相談を受けたんですが・・

難しいですよね。


仮に有名国立大学に受かったとしてもそれで進路

が決まる分けでもないし・・

大学を卒業して就職をするにしても、彼の希望する

科学系の技術者なんて無理だと思うんですよ。


たくさん面接をして、内定通知が来たところにする

しかないですし。もし技術系の会社に就職できても

営業に回されるのはよくあることですからね。それ

で会社を辞める人も多いと聞いてますから。


ですから私が言ったんですよ・・

「良いところって皆が行くからね、向こうから見れば

いくらでも来るんだから・・社員を大事にしないよね。

それを考えたら皆の行かないところを狙うしかないよ

ね。人が来ない会社は社員を大事にするだろうから。」


そうしたら彼は父親に聞いたんだそうですよ。

人がやりたがらない仕事って有るかって・・


父親の答えはこうでした。

「海運関係だな!  海運は陸上輸送と並んで日本の

大動脈なんだが船員のなり手が少ないから給料は良い

し社員はとても大事にされるぞ。

その代わり人が行かないのは理由がある。船が勤務場

所だからな。タンカーは2か月乗船して1か月の休暇で

大型フェリーは20日乗船して10日の休暇になるんだ。

陸上に比べると格段に給料はいいぞ。」


それで・・

彼はネットで調べたりして急遽進路を変えたんですよ。

漁船員とは違って海運で働くには海技士という国家資格

が必要なんです。海洋大学か海技士短期大学に行くこと

が必要なんですね。


かれの父親はかなり年が離れていて60才だったのです

が・・親にお金を使わせたくなかったのでしょうね・・

彼は1年浪人で無駄にしてたので短大の方に行ったんです。


県内トップの高校から海技短大ですからね・・

海技短大は中レベルの高校でも普通に受かりますから

彼は学年トップで、優秀学生に選ばれて卒業しました。


そして学校の紹介で太平洋フェリーに就職したんです。

あの、太陽のマークが船の横にでかでか付いている・・

1万トンのフェリーに3等機関士として載ってます。

31歳で年収500万だそうです。


私といえば、浪人はしないで国立大学へ行き、国家公

務員になりましたが、公務員の文化が私には合わず・・

国立病院を辞めて起業しました。苦労をしています・・


彼はランクを落として正解だったと思います。

・・上の世界で下を這うより、下の世界で上を歩く・・


私は上に行って下を這いましたからね (笑)



























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る