第3話 第一の刺客 幼馴染②




 目の前のマアムと名乗る女性は俺の記憶とは全然違った姿をしている。


 記憶の中の彼女は、13歳と言うのもあるが、もっと健康的な見た目をしていた。


 だが、今目の前にいる女性はかなり恰幅が良くなっている。ストレートに言えば太った。


 顔は全体的に丸々としており、顎に至っては二重顎になっている。


 手足も歩行可能前の赤ちゃんみたいになってるし、服の上からでも下腹が出ているのが分かる。


 ただ、昔からのショートボブの髪型は変わっていない。今は見た目がボブみたいだが・・・


「本当にマアムか・・・?」


 未だに信じられない俺は再度聞き直したが、彼女小さく肯定の首を縦に振った。


 よく見れば面影が残っていない事もないか・・・


「お前、太ったなぁ・・・」


「なっ!? 女性に対していきなり失礼だと思わないの?」


 思わない。他の女性に対してなら思うが、お前に対しては思わない。


 マアムは怒りにプルプル震えながらこちらを睨みつけている。


「―――何の用だ?」


「・・・・・・・・・・・・」


 おい! だんまりかよ! 質問されたら答えるって親に習わなかったか?


 マジでなんだ? まさか今更謝りに来たとかそんな殊勝な事でこいつはここまで来たのか?


 今更過ぎるが・・・


 こいつマアムとは同じ村出身の幼馴染で、俺が英雄スキルを獲得する前から恋仲になっていた。


 しかし、スキルを獲得して暫くして、その代償の所為もあるだろうが、寝取られた。


 しかも、もう一人の同じ村出身の幼馴染に寝取られた!


 何なの? 幼馴染って寝取られないとダメなの? しかも、間男はもう一人の幼馴染じゃないとダメなの?


 幼馴染≠NTRではあるだろうが、幼馴染≒NTRの法則は成り立つだろう。いつか証明してやる。


 あの時はめちゃくちゃ傷ついた。しかも、こいつらの合体シーンも見てるからね。何故かいつもタイミング悪く出くわす。これも代償の所為なのかも・・・


 しかも、マアムともう一人の幼馴染はその後一緒になって、結婚したはずだ。この太り方は幸せ太りか? 〇ね!


 何時までも黙られたままだと話が進まないし、こいつと何時までも一緒に居たくないから一応用件だけ聞こうか


「黙ってるなら、俺はもう帰るぞ! 何か用事があって来たんじゃないのか?」


「―――山」


「あ?」


「や、山。私の話聞いても山ぶっ飛ばさない?」


 何言ってるんだこいつは? 俺がいつ山をぶっ飛ばした?


 ・・・・・・・・・・


 そう言えばこいつとの別れ話の時、怒りの余り英雄スキルで山ぶっ飛ばした気がするわ。


 ハハハ、ちょっと前の俺、すまん。山ぶっ飛ばした事あるわ。


「ぶっ飛ばさねぇよ。だから、さっさと用件を言え!」


「あの、よ、寄り戻さない?」


 ―――やっぱり山ぶっ飛ばしていい?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る