第4話 第一の刺客 幼馴染③
俺の耳が可笑しくなったのか? 今こいつ何て言った?
「―――あいつはどうしたんだよ? リュークの野郎は?」
まぁ、しっかり聞こえてましたけどね。ただ、ワンクッション置かないと色々落ち着けない。
リュークとはもう一人の幼馴染で、俺からマアムを寝取った男だ。故郷で仲良く暮らしていたんじゃないのか?
「別れた・・・・・・・・・・」
大体予想は出来たけども。それでも、別れて元彼の俺の元へ来るかねぇ。しかも、酷い裏切りしておいて。
「ハッキリ言うけど寄りを戻すつもりはない。正直顔も見たく無い・・・・・・・・・・」
まぁ、久々のマアムは初見で、その顔を見ても思い出さなかったから、今の顔は見るに堪えるけど、体裁って大事じゃん?
「今の私の顔見ても分からなかったくせに・・・・・・・・・・」
何なんだ? この憎まれ口は? お前にそんな事言える資格があるのか? だんだん腹立ってきた。
「うっせー! そんなブクブク太って変わった奴の事なんて分かるわけないだろう!」
「な、何よ! 私にだって色々事情があるのよ!」
「どうせ、食後に甘菓子を食べ過ぎたんだろう! 俺達もそろそろ30歳なんだからIBMには気をつけろよ」
「―――BMIね」
マアムに大きなため息をつかれた。確かに、間違えたけども・・・ 恥ずかしい。
話の腰がボキボキに折れてしまった。
「とにかく、俺は寄りを戻す気はないから、何があったか知らないがリュークの元へ戻れ!」
「―――あんな浮気者の所へは戻らない」
いや、お前もそうだからね? 悲劇のヒロイン見たいな顔しているけど、お前も大概だからね?
股と一緒で頭のネジも緩んでいるみたいだなぁ・・・ 救いようがない。
「お前、俺に酷い仕打ちしといて、いざ、自分がされたら掌返すって言うのはどうかと思うぞ」
「うぅ、ごめんなさい・・・」
はい、すぐ泣くよね。 もういいよ。 俺の傷心した心を更に抉るのはやめてくれ。
「お前に泣かれても何にも解決しない。ましてや、俺の心も救われない。いいから、消えてくれ」
「うぅ、本当にごめんなさい・・・」
まだ泣いてる。まぁ、今は泣く以外にやる事が無いんだろう。 俺も今はやる事が無いからその気持ちは良く分かる。
俺はまだ泣いてるマアムを強引に敷地外に追い出し、門扉を閉めた。
マアムの独り言がボソッと聞えて来た。
「暫く、この町に留まるから。諦めないから・・・」
マアムはそのまま町の中心へと消えて行った。
マジか・・・ この町に留まるのかよ。大丈夫か?
いや、俺じゃなくて、マアムが。
さっきも言ったけどこの町の領主は俺だ。そして、ここの住人は元から居た人達も居るが、殆どが英雄の俺目当てで移住して来た人ばかりだ。
その為、住人の殆どが俺を崇拝しているレベルで慕ってくれている。
もしも、マアムの素性が知れれば、磔刑後の斬首刑は確定だろうな。
まぁ、俺の知ったこっちゃない。
思えば、マアムとの別れは酷かったなぁ・・・
こう言う場合は大概ヒロイン的な女性が俺を支えてくれるはずなのに、マアムと別れた時の俺は当然一人。
対して、向こうはマアムとリュークの二人。
被害者は俺のはずなのに、何故か俺が悪者みたいな? そりゃ荒れるよ。
あの頃はその反動で魔族を殺しまくってたよ。それこそ親の仇の様に。
それで魔族との最前線に行った時に2番目の恋人と知り合う訳だけど、
―――ああぁぁ、思い出したくない。
やっと代償が解消されたのに、何故俺の心に平穏は訪れないんだ?
今からでも山の一つや二つぶっ飛ばしてこようかなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます