第20話 ポーションクリエイター(2)
ライデンから召集を受けた次の日、レナとティナは仕事場にいた。
昨日、ティナを診療所に連れていった。ティナの足は比較的軽いねんざだった。
医者が言うには、走り回ったりしなければ問題ないということだったので、足を包帯で固定し、痛み止めをもらい、今日から仕事を再開することにした。
レナは明日出発だが、ほとんどの準備と手続きを昨日のうちに終わらせたため、ティナの研修の続きとしばらく休むことを伝えるために仕事場に来ていた。
アイリーンは昨日から休んでいるようだ。代わりの管理の人に伝えると、国からすでに通達されていたようで快く承諾してくれた。
さすがこうゆうのだけは早いわね。レナは皮肉を言った。
レナとティナは、それぞれ自分の器具を用意すると、まずはティナのポーション作成を確認することにした。
「じゃ、この前みたいにやってみて」
「はい!」
ティナは液体をガラス製の器にいれ、小型のコンロに火をつける。
液体が沸騰するのを見計らうと、人掴みの薬草を中に入れる。
そして、器の上に両手をかざして集中した。
「魔力を……高めて」
先日、ポーションを作成した際、かなりの魔力を使用しないとポーションが作成できなかったためか、魔力を十分に高めてから液体に送り込んだようだ。しかし先日とは違い、今日はなにか様子がおかしい。
「ティナ魔力が強すぎるわ、少し抑えて」
レナは異変を感じ、ティナに指示を出した。
「え、は、はい!」
ティナは慌てて魔力を調整すると、やがて器から赤く強い光が発生し、静かに消えた。
器に残っているのは赤い液体だ。
「で、できた?」
ティナはやや興奮気味で言葉を発した。
レナは器に入っている赤い液体をじっくりと観察し始めた。
器の中の赤い液体は、見事に透き通って、見ていると吸い込まれそうだった。
鑑定スキルほどの精度ではないにしろ、レナはポーション作成という仕事を長くやっているせいか多少の目利きなら可能だ。
そしてティナが今作成したポーションは、少なくともこの前のポーションより品質が高い。
「すごいじゃない、この前より高品質のポーションができてるわよ」
「ほ、ほんとですか!」
ティナは満面の笑みで喜んだ。
「次からは、魔力を一気に送らないでゆっくりと送っていくやりかたにしてみましょうか」
「はい!」
レナは初日に魔力を全力で送って、やっとポーションが作成できていたティナが、わずか二日でここまで魔力が上昇したことに驚いた。
純粋なポーションクリエイトとはいえ、初日でポーション作成を成功させること自体が稀である。それに加えて二日目にしてこの魔力の上昇。
「ティナには、もしかして才能があるのかな」
「才能? それは、わたしのスキルがポーションクリエイトだからってことですか?」
「ううん、それとは別、ポーションクリエイトのスキルを持っている人は他にもいるけど、初日からポーション作成を成功させたり、ましてやこんな短期間で魔力がこんなに上昇する人はいなかったわ」
「そうなんですか」
「うん、だから自信をもって、あせらないでね、ティナならすぐに一人前になれるから」
「はい!」
ティナは興奮が収まらないといった感じか。先日作成したポーションの半分が、品質の問題で納品ができなかった悔しさからの一転。
私も、全部納品できた時は嬉しかったなぁ。
「よし! 私も作ろうかしら」
レナは大きな寸胴鍋いっぱいに液体を入れた。
「本当に! これが一番! きーつーいー!」
レナは声を上げながら寸胴鍋を持ち上げると大型のコンロに乗せた。
ふぅ、と一息つくと寸胴鍋を火にかける。
液体を沸騰させ、タイミングを見計らうと、大量の薬草を入れてさらにタイミングを見計らう。
ふと、視線を感じて確認すると、ティナがその様子を一瞬も見逃さないようにとジッと熱視線を送っていた。
「あぁこれがあったんだ……やりづらいなぁ……」とつぶやいた。
「なんか言いました?」
「い、いや! なんでもないわ!」
そろそろね……。
寸胴鍋に両手をかざし、魔力を送り込む。すると赤い光の柱が現れ、ゆっくりと消えていった。
「よし、完成ね」
レナは完成したポーションをジッと確認する。
よしよし、さすがにまだ負けてないわね。
「やっぱりすごいですね、こんな量をこんな短時間で」
「さすがに、まだまだ負けないわよ」
「わたしももっと頑張らないと!」
ティナはそういうと引き続きポーションの作成に取り掛かった。
レナはそんなティナを見つめながら「いやぁこれ以上頑張られると、本当に抜かれるかもね」とつぶやいた。
その日の仕事の帰り。
明日の準備の仕上げと残りの手続きを済ませ、レナは家に戻った。
いよいよ明日は超大型魔物討伐の出発の日だ。
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