第6話 マテリアルクリエイター(6)

 ワイバーンの肉を受け取ったレナは家に戻って服を着替え、早速料理に取り掛かることにした。


 調理場は朝、ティナが掃除してくれたのか。ピカピカになっていた。


 レナはさすがティナねと感謝をして、ワイバーンの肉をどのように料理しようかと考え始めた。


 まずは味見と、ワイバーンの肉を一口サイズに切り、フライパンで焼いて食べた。


「お、おえ……こりゃ、食べれたものじゃないわね、でも、この味……」とつぶやいた。


 ならば! とレナは「針のむしろ!」とワイバーンの肉に向かってスキルを使った。


 ワイバーンの肉には四方八方から細長い鉄の串が何本も突き刺さった。そして魔力を解除して針を消すと、保管してある薬草やハーブに手を伸ばした。


 薬草を細かく刻み、刻んだ薬草をふんだんにワイバーンの肉に練り込み始めた。そして、大きな鉄の鍋を取り出すと、鍋の中に水を入れ、その肉と残りの薬草やハーブ、香辛料を鍋に入れた。そしてお酒を、とつぶやき、鍋に酒を入れ始めた。


 少し沸騰させてー、と鍋を火にかけて、蓋をした。


「じゃこのスキに」と今朝買った、ブラックバッファローの肉を取り出すと香辛料で下味をつけ始めた。


 こっちは美味しいことが決まっているんだから最小限でいいわねと鼻歌を歌い始め、果物屋からもらった果物を切り始めた。




 果物を切り終わると、そろそろね、と肉を煮ていた鍋を開け、さらに香辛料と黒い液体を大量に入れ始めた。そして、鍋に向かって「マテリアルクリエイト」と唱える。


 鍋をみると、つなぎ目がないように蓋がされていた。


「これで魔力を維持して……今日はだいぶ魔力を使ったわね」とレナは左手の義手を確認すると、テーブルに置いてある青い液体の入っているビンを取り、そのまま一気に飲み干した。


 そして、「うん、さすがはマジックポーション」と左手の義手の指を動かした。




 しばらくするとティナが学校から帰ってきた。


「ただいま」というとティナは料理しているレナに気づいたのかレナの方に寄ってきた。


「おかえりー」


「なにか手伝いましょうか?」


「だいたい終わったから大丈夫よ、ちょっと出かけてきたいから、この鍋ちょっと見ててくれる?」


 ティナは、見事につなぎ目なく密閉された鍋をみると「レナさんのスキルって本当に便利ですよね」と感心するように言った。


「どうかなぁ、魔力を解除すると消えちゃうし、出してる間は魔力吸い取られるし、結構不便よ? まぁこのくらいなら大した事ないけどさ」


 ティナはテーブルに置いてあるマジックポーションの空き瓶を手で遊ばせながら、ため息をつくように言う。


「おまけにポーションまでつくれるなんて、ポーションクリエイトのスキルのわたしの立場がないですよ」


「魔力の性質がポーションクリエイトと似てるっぽいんだよね、私も最初はポーションクリエイトだと思ってたしなぁ、ちなみにハイポーションは私作れないわよ、そっからは専門家の、ティナの出番ね」


 それを聞いたティナは「明日から頑張ります」と笑顔で答えた。


「じゃ、私は用事あるから、お願いね」


「離れても魔力って切れないんですか?」


「町の中にいるくらいの距離なら大丈夫ね」とレナは外へと出て行った。


 ティナはレナを見送り、改めて調理場を見渡すと、その悲惨なあり様に冷や汗をかいた。


「今朝、片づけたはずなのに……」



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