第12話 ラガス視点
私はラガス・フォン・アルガス。 アルガス王国の国王である。
儂には、妻のユリアと息子のルイス、そして間もなく10歳になる娘のマリアがいる。
そんなある日、魔物が異常発生しているとの不穏な知らせが東の砦より届いた。
やはりか… 私は思わず『絶対に守る』と声を出していた。
アルガス王国にはひとつの伝承がある。
王国に産まれたのが王女の場合、10歳までしか生きられないと言うものだ。
過去500年で4人の王女が産まれたが、いずれも10歳で死んでいる。
マリアは100年振りの王女だった。
マリアが産まれて直ぐに存在は秘匿され、現在まで一部の者しか存在を知らない。
それ程までに徹底したにも関わらず、伝承通り魔物が異常発生しだした。
その事を妻のユリアに伝えると、ユリアは泣き崩れてしまう。
「安心してくれ。マリアは必ず守る…」
私はそう言い残し、部屋を後にした。
魔物の異常発生の報告を受けてから2ヶ月後、城から目視できるまでに魔物が迫っていた。
その数およそ1万。
「だからなんだ。1万だろうが、100万だろうが、マリアは必ず守る」
私は自分に強く言い聞かせる。
それから2週間後、とうとう魔物が城壁の前に現れた。
「ルイスよ、敗北は許されない」
「心得ております…」
ルイスは足速に去ってゆく。
思えば、ルイスには辛い役回りばかりで申し訳ないが、マリアの為にも頑張ってもらわねば…
私は自室のバルコニーから戦況を見ていた。
「何だアレは…」
突然巨大な竜巻が三つ現れ、魔物どもを蹴散らして行く。
魔物との戦闘が始まって僅か3時間で我々は勝利した。
確かに勝利した筈が、私は静かに震えていた。
「化け物…」
たったひとりの少年に恐怖し、思わず呟く。
********
王城の一室にカリナ魔法騎士団長とラード騎士団長、そしてルイス王子がおり、暫くするとラガス国王とゲイツ丞相が入って来た。
「報告を頼む」
ラガス国王の言葉にルイス王子が答える。
「はッ! 魔物7,000体を殲滅。リーダーらしき魔物はハルト殿が一騎討ちにて討ち取りました」
「 あの巨大な魔法はハルト殿が?」
「はい。一撃で5,000体を撃破致しました」
「カリナよ、あの様な魔法は見た事があるか?」
「いえ… 恐らく帝王級の複合魔法かと思いますが、その様な事はSランク冒険者でも難しいかと… 少なくとも、私には出来ません」
「怪我人まで治したとは
「はい。衛生兵の証言から間違いないかと」
「以前、ルイスが言っていた事は真実であったか…… 我が国にとって、今後のハルト殿に対する対応は最重要課題だ。間違っても敵に回す様な事はあってはならん」
「おっしゃる通りかと…」
ラガス国王の言葉に丞相が反応する。
「して、ルイスよ。ハルト殿はいつ来るのだ?」
「気になる事があるようで、そちらを済ませてから来るようです」
「そうか。いつ来ても失礼がない様に、皆に申し伝えよ」
「畏まりました」
- 3ヶ月後 -
「遅い!ハルト殿は何をしているのだ!!」
「ルイス王子、落ち着いて下さ!」
いつまで経ってもハルトが現れない為、ルイス王子の我慢も限界まできていた。
王女の10歳まで残り3ヶ月をきっていた。
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