第11話 反撃開始

翌朝、城壁の上にはハルトの姿があった。

作戦はハルトが開幕の一撃を放った後に、そのまま魔物の群れに突入する。

その後、撃ち漏らした魔物をルイス王子達が討伐して行く流れだ。


ルイス王子他、騎士団達は正門前に待機している。その数、総勢5,000人。


「皆の者! これからハルト殿が開幕の一撃を放つ!! その後は我々王国騎士団が残りの魔物を討伐する! 必ず勝つぞ!!!」


「「「「「おぉぉぉぉぉ!!!!」」」」


(流石ルイス王子、騎士団達の士気は最高潮って感じかな? それじゃあ、気合い入れて行きますか!)


『帝王火魔法&帝王風魔法ファイアテンペスト!』


ハルトは火魔法と風魔法のを放つ。

ちょうど魔物の中心地点に、3つの巨大な竜巻が炎を纏って現れた。


「「「ギャャャャャヤヤ!!!!」」」


魔物達は逃げ惑うが、ハルトの魔法がその全てを呑み込み逃がさない。


(今ので5,000体は討伐出来たけど、騎士団に残り2,000体は厳しいか… )


当初の予定では、魔法後はSランクの魔物まで一気に行く予定だったが、思っていたよりも魔物が残ってしまった為、ハルトは残りの魔物達を討伐しながら向かう事にした。


『身体強化』『魔力感知』『思考加速』


ハルトは強化魔法をかけ、ゴラテアからドロップした日本刀おぼろを収納から取り出して城壁から飛び降りる。

ハルトはジグザグに走りながら横凪を放つと、一振りで数十の魔物が消えていく。


ハルトがSランクの魔物に辿り着いた時には、残り1,000体をきっていた。


(この位なら騎士団でも大丈夫だろう。後はこいつを片付けて終いだな)


『鑑定』


ミノタウロス/Lv.82

【称号】邪神の使徒

【HP】29000/29000

【MP】4500/4500

【腕力】22000

【魔力】3000

【防御】18000

【敏捷】26000

【知力】12000

【スキル】再生 斧帝 突進 物理耐性


(この強さの魔物が襲って来るとか、狙いは何だ? しかも邪神の使徒って…)


ハルトは魔物の強さを見て、違和感を覚えた。ダンジョン下層ならまだしも、地上にこれ程の魔物が出て来るのは明らかにおかしいと感じたのだ。


(まぁ、理由が何にせよ倒しちゃうけど)


ミノタウロスはハルトの異常性に気付き暫く構え合った後、体が一回り大きくなり、突進して来た。


(身体魔法を使っての突進スキルか。かなり破壊力がありそうだが… 敢えて受ける!!)


ミノタウロスの頭には2つの鋭い角があり、前傾姿勢でハルトに突進して来た。

ハルトはミノタウロスの角を掴み、突進力を利用した裏投げを繰り出す。


背中から叩きつけられたミノタウロスは、呼吸が出来ずに硬直した。

ハルトはミノタウロスを見下ろし、首を落とす。いくら再生があっても、首を落とされたら生き残れない。


ハルトはミノタウロスで訓練しようとしたが、レベル差があり過ぎてあまり意味をなさない事を悟りトドメを刺した。


(いくら魔物でも、甚振るのは好きじゃない…)


ハルトはミノタウロスの角と魔石を収納に入れると、ルイス王子の応援に向かう。

正門前にはCランクの狼型魔物マッドウルフが80体ほど居たが、騎士団が危なげなく対応していた為、騎士の育成の為にも手を出すのをやめた。


(何でも手を貸せばいいと言うものでもないし、俺は支援にまわるか)


ハルトは騎士の背後に転移してルイス王子に尋ねる。


「ルイス王子、Sランク魔物は討伐しました。今からは支援にまわりたいと思うのですが、如何いたしますか?」


「助かる。あのテントに負傷者が居るんだが、助けてもらえないだろうか?」


「わかりました」


ハルトは直ぐにテントへ向かう。中に入ると、約50人の騎士が寝かされていた。

見渡すと、リーダーらしき衛生兵を見つけたので話しかける。


「すみません! ルイス王子からの命を受け参上したハルトと言います。回復魔法を使えるので、怪我人を治療したいと思います」


「其方の噂は聞いています。宜しく頼む」


「はい!」


(大きな怪我人は居ないな… これなら、範囲魔法で回復可能だ)


中級光魔法エリアハイヒール!』


「「「おぉぉぉぉ…」」」


テント内に居た騎士達は全て回復し、それを見届けたハルトは再びルイス王子の元を訪れる。


「ルイス王子、怪我人の回復は済みました」


「流石だな。後は我々に任せて、ハルトは休んでくれ」


「わかりました。私は気になる事があるので、少し街を離れます」


「街を離れる!? 其れは困る! ハルトにはきちんと礼をしなければならないし、父上も会いたがっていたのだ!!」


「そんなに長くはかからないと思います。終わり次第、改めて王城に向います」


「… わかった。必ずだぞ」


ハルトはその足で王都を後にした。


- 2ヶ月後 -


(やはり全てがここに繋がるか…)


ハルトは一つのダンジョン前に居た。

ハルトが気になっていたのは、王都に現れた魔物達は何処から来たのか?と言う事だった。アレらは明らかに明確な意志が存在していた為、どうしても気になったのだ。


魔物の痕跡を辿ると、全てが目の前のダンジョンから始まっていた。


(とりあえず入ってみるか)


ハルトがダンジョンに入って3ヶ月。


(ここが最下層か… 恐らく最下層ボスがあのミノタウロスだったんだろう)


ハルトはダンジョン50階層に居た。

ここまで一度も魔物に会わなかった事から、王都を襲った魔物達はこのダンジョンから出たものと推測する。


(魔物大行進スタンピードは聞いた事があるけど… 一度、王都に戻るか)


これ以上はわからなそうなので、ハルトは王都に戻る事にした。

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