第9話 王都襲撃
ハルトはガジルの家に通され詳しく経緯を聞いた。
「さっきは声を荒げてすまなかった。ハルトには何の責任もないのに、お前が居てくれたらと… すまない」
「いいえ… 」
「ところで、ハルトは何をしていたんだ?」
「前にお話したダンジョンに行ってました」
「なんでまたそんな所に?」
「もっと強くなるためですかね…」
「そうか… ハルトが居なくなって直ぐに王都から使いが来たんだが、ハルトが居ないと知ると驚いていたぞ」
「王都から使いですか? 内容は聞きましたか??」
「なんでも魔物が活発化しだしたらしく、王都近隣の村に被害が出ているそうだ。それでハルトの力を借りに来たらしい」
「そうですか… 魔物が活発化って良くあるんですか?」
「どうだろうな。俺の知る限りでは、過去に何度かあったらしいが… 1番最近だと40年くらい前の筈だ。その時も小さい村なんかは、魔物に蹂躙されたらしい。ハルトが治した中に、脚が欠損してた騎士がいただろ? あの騎士は2日前に王都からハルトを訪ねて来たんだ。村に着く前に魔物に襲われたみたいだがな…」
「そうだったんですね。騎士さんから話を聞いてみます」
ハルトは騎士が居る治療小屋へ向かった。 騎士の怪我は完治していたが、失った血は回復しない為、いまだベッドで横になっていた。
「失礼します、お加減はいかがですか?」
「は、ハルト様! この度は怪我を治して頂き有難う御座います!!」
「怪我をされたのは僕のせいでもありますから当然です。 それより、王都からいらしたとか聞きましたが?」
「そうです! 是非お力を貸して頂きたく参りました」
「詳しく教えてください」
騎士が言うには、ランクE〜Aまでの魔物が王都周辺の村や街を襲っており、既にいくつかの村は壊滅状態らしい。
勿論、騎士団や冒険者が対応しているが、いかんせん魔物の数が多過ぎて全てを防ぐ事が出来ておらず、今までバラバラに散っていた魔物達が一斉に王都を目指し出した。所謂、緊急事態だと語った。
「成程… 王都は持ち堪えられそうですか?」
「王都には高さ7㍍の城壁があるので、直ぐにどうこうと言う事はないとは思いますが、いつかは破られるでしょう…」
「魔物の数はどれくらいなんですか?」
「歩兵の話ではおよそ5,000だと言っております」
「大体の状況はわかりました。僕がどの程度役に立てるかわかりませんが、急ぎ王都へ向かいます」
「!! 宜しくお願い致します!」
ハルトは事情をガジルに話し、急ぎ王都へ向かった。サルタ村から王都迄は馬でも2日掛かる道のりを、ハルトは半日で辿り着いた。
ハルトが王都まで迄300㍍をきったところで、城壁が見えて来た。
「これは酷い…」
城壁には数千となる魔物が群がっており、城壁の周りを埋め尽くしていた。
(これは急いだ方がいいな。ここまで来れば転移魔法で一気に城壁内に入れそうだ…)
転移魔法は一度訪れた場所か、目視できる場所にしか転移出来ない。その為ハルトは転移座標を城壁内上空に設定して転移し、風魔法を使い落下速度を調整して無事侵入に成功した。
(とりあえずルイス王子に逢えばいいかな? 前に「王都に来たら声を掛けてくれ」って言ってたし。探知魔法で探ってみるか…)
ハルトは探知魔法でルイス王子が城に居る事がわかったので、城に向かい歩き出した。
(さすが異世界。こんなデカい建物見た事がない…… と、とりあえず、あそこの門番に聞いてみるか)
ハルトの目の前には白を基調とした城があり
、入り口には門番が2人立っていた。
「すみません。ハルトと言うんですが、ルイス王子に繋いで貰えませんか?」
「ん? ハルト?? 少年、王子には気軽に会う事は出来ないんだ。少年が頑張って騎士団に入れたら会えるかもしれんな。その時にまた会いにおいで」
「… わかりました」
(どう言う事だ? 何時でも会いに来て良いって言ってたのに… しょうがない。今直ぐ城壁が崩れる訳じゃないし、とりあえず宿でも探すか…)
ハルトは宿を探しに街中に戻った。
その頃、城内では連日の会議が開かれていた。
会議室にはラガス国王とルイス王子、ゲイツ丞相とラード騎士団長の4人が居た。
「何時まで籠城出来そうだ?」
ラガス国王が騎士団長に問いかける。
「恐らく、もって3日かと…」
「3日か… ルイス、例の少年はまだ見つからんのか?」
「2日前に向かわせた騎士がもう村に着いている筈なんですが…」
「王子、その少年が居ればこの難局をどうにか出来るとはとても思えませんが…」
「丞相殿、ハルトさえ居れば、この程度は難局でも何でもありませんよ…」
「信じられん… 街に居るAランク冒険者でも既に諦めている様子。たった10歳の少年がどうにか出来るなど…」
「どの道、我々ではどうにも出来ん状態だ。そのハルトに賭けるしかないだろう」
国王の言葉に皆が沈黙する。
「一旦、休憩にしよう。1時間後また此処に集まってくれ」
国王の言葉を受け、ルイス王子は会議室を後にした。
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