第6話 ハルト
ハルトは静かに語り始めた。
ダンジョンで目を覚ました事や、階層が88階層だった事。生きる為に、約4年に渡り修行した事など、【異世界転移】以外を包み隠さずに話した。ガジル達は信じられない様子だったが、ハルトの話を聞いて納得するしかなかった。
暫く沈黙が続き、ルイス王子がハルトに話しかける。
「大体の話はわかったが、正直信じられない。ダンジョン88階層と言えば、人類最高到達記録じゃないのか? そもそも、そんなに深いダンジョンを私は知らない。
そのダンジョンの場所は覚えているかい?」
「はい。この村より西に10㌔程の場所にあります」
「一度、調査する必要がありそうだな…」
「ガジルさん、嘘を付いてすみません」
「構わんよ。最初に聞いてたら絶対信じなかったしな…」
その時、ハルトの探知魔法に魔物の群れが引っ掛かった。
「因みに、ルイス様達が対処していた魔物達が、如何やらこの村に向かって来てるようです」
「「「 ―!? 」」」
「それは本当か!!」
慌ててガジルが声をあげた。
「はい。僕の探知魔法に引っ掛かりました。数は凡そ200位ですね…」
「なんてことだ… ガジル殿すまない、どうやら我々を追いかけて来たようだ。魔物討伐の為、直ぐに出発する」
ルイス王子はガジルに頭を下げて部屋を出て行った。
「ハルトよ、お前がなんとかしてやれないか? このままじゃ同じ事の繰り返しだ。もしかしたら、村も襲われるかもしれん」
「わかりました。僕に任せて下さい」
ハルトが外に出ると、ルイス王子達が慌ただしく出発の準備をしていた。
「ルイス様、僕もお手伝い致します」
「ハルトか… ハルトの話を疑っている訳じゃないが、本当に大丈夫か?」
「はい。とりあえず近くまで行ったら、魔法で蹴散らそうと思います」
「わかった… 宜しく頼む」
ハルトはラードの馬に乗せてもらい着いていく。暫く走ると、ひらけた草原に出た。
「ルイス様!」
「どうしたハルト?」
「恐らく魔物達はこの草原を通ると思います。なので、この草原で待ち伏せしてはどうでしょうか? 草原の方が魔法も使い易いですし」
「確かに良さそうだ…
皆の者!この草原で魔物を叩く!!開幕の一撃はここに居るハルトが行う!それが済み次第、速やかに殲滅せよ!」
「「 うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」
「さて、ハルトよ。頼んだぞ」
「任せて下さい」
それから1時間程で魔物達が姿を現した。
魔物は2㍍程の獣、オークだった。
二足歩行で片手には棍棒を持っている。
ハルトは【鑑定】を使った。
オーク/Lv.11
【HP】78/85
【MP】3/3
【腕力】22
【魔力】1
【防御】16
【敏捷】11
【知力】8
オーク/Lv.23
【称号】ジェネラル
【HP】166/173
【MP】30/30
【腕力】88
【魔力】15
【防御】60
【敏捷】36
【知力】18
【スキル】 守護の心得
オーク/Lv.45
【称号】キング
【HP】486/500
【MP】120/120
【腕力】300
【魔力】80
【防御】280
【敏捷】160
【知力】120
【スキル】再生 王の心得 カリスマ
「成程… 普通のオークが169体とジェネラルが30体、それとキングが居ますね。レベルは下が11でキングが45です」
「「「 ……… 」」」
「はい?」
「はい? でわない! 何故そんな事までわかるんだ!!」
「え? 【鑑定】を使えばわかりますよ」
「何を言ってる! 鑑定魔法の対象はひとつと決まってるんだぞ!」
「そうなんですか? それじゃあ、僕はラッキーなのかな? そんな事より、そろそろ始めてもいいですか?」
「そんな事って… もう良い。宜しく頼む」
「先ずは魔物を逃さない為に退路を断ちます」
『
ハルトはオークの背後に、高さ5㍍の石壁を囲む様に造った。オーク達は突然現れた壁にパニックになっている。
「これで、オークは逃げられないでしょう。さぁ、どんどん行きますよ!」
ハルトはオーク達の頭上に小型の太陽を創り出す。それを見た騎士達は、オーク達よりパニックになる。
「何だあれは!」
「なんて熱量だ…」
「信じられない…」
騎士達からかなり離れているにも関わらず、凄い熱が伝わってくる。
「は、ハルト、アレはなんだ! あんな物を落としたら、我々まで死んでしまうぞ!!」
「ルイス様、落ち着いて下さい。アレをそのまま落としたりしませんから。 まぁ、見てて下さい」
『
ハルトが右手を小型の太陽に向けて握りしめた。すると小型の太陽が爆発して、雨の様にオーク達へ降り注いだ。
「「「「ギャャャャャャャャャャャャャャャャャ」」」」
「綺麗ですね…」
「何を言ってるんだお前は…」
ラードが呆れて返事を返す。
ルイス王子を含め、騎士達は誰一人として微動だにしない。ラードがルイスを揺さ振り現実に引き戻す。
「ルイス王子! ルイス王子!!」
「そんなにデカい声を出さなくても聞こえている!」
そんな中、空気を読めない男がひとり。
「それじゃ、僕はそろそろ…」
「「帰るな!」」
「はい…」
「もう説明は求めん。ハルトのおかげで大勢の命が救われた。改めて礼をさせて欲しい」
「御礼には及びません。あのままだと、村も襲われていたでしょうし」
「それでもだ。何か欲しい物はないか?」
「そうですね… 欲しい物とは違うんですが、いつかお城を見てみたいです」
「そんな事ならお安い御用だ。なんなら、今から一緒に行くか?」
「いえ、また改めてお伺い致します」
「我々はこのまま王都へ帰還する。今回は本当に助かった。ありがとう。」
ルイス王子が王都に向かい、ハルトはガジルの家に居た。
「で、ハルトはこのまま村に残るのか?」
「許されるならですが…」
「許すも何も、この村にはお前の様な訳ありばかりだ。気にする事はないぞ」
「ありがとうございます!」
(はぁ… 目立ちたくなかったけど、しょうがないよな。この後、大事にならなければいいけど…)
ハルトは今後に不安を抱えながら眠りについた。
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