第4話
『公爵様への報告書
お嬢様は無事に隣国の別荘地に到着しました。
驚くべきことに色んなことに挑戦されております。
ショックもそれほど受けて内でいないようです。
乗馬にピクニックにパン作りなど、いろんなことに積極的に取り組む意欲があるようです。
今のところ、健やかにすごされています。
王国にいたときよりも自由でのびのびとして笑顔もみられます。』
ここまで書いて私はペンを置いた。
どうしよう。意外と難しいぞこの報告書。
私は小さな頃からアマンダお嬢様の側で育ってきた。
捨て子だった私はアマンダ様の話し相手として公爵家に引き取られたから。
アマンダお嬢様は本当に小さい頃から美しくて完璧な令嬢だった。
神のお告げにより王太子の婚約者となるまで没落貴族だったなんて信じられないくらい。
それはもう性格もよく美しい、完璧な美少女だった。
そんなお嬢様の秘密を知ったのは、お嬢様が学園に通うようになったときのことだ。
私が身の回りの世話係にと旦那様から直々にお声がかかった。
嬉しかった。
アマンダお嬢様のことは大好きだし、お嬢様の成長を見守ることができ、いつでもお嬢様を慰めることができるから。
だけれど、私は旦那様から重大な秘密をそこで聞かされた。
口外できないという秘密保持契約にサインをさせられたあとで。
最初は秘密保持契約は王太子の婚約者であるお嬢様の側にいるのだから当然のものだと思ったし、深く考えていなかった。
だけれど、契約書にサインした途端、私はとんでもないことを聞かされた。
アマンダお嬢様が実は“男”だという衝撃の事実を。
最初は何を言っているのか分からなかった。
だって、アマンダ様神のお告げによる王太子の婚約者だというのに。
どうして男だなんてことがありえるのだろうか。
混乱した私は、
「もしかして、王太子様は実は王女様なんてこと……」
といったら、それはあっさり否定された。
真相はこうだった。
神のお告げにより、王太子と結ばれる少女は異世界から現れる。
しかし、それは十六年後。
だけれど、十六年も王太子に婚約者がいなければ、他国の姫君との結婚を持ちかけられたり、万が一このお告げがどこからかもれた場合、権力を狙って王太子の運命の相手を偽装する者があらわれるのではないかと国王は恐れた。
そして、白羽の矢がたったのが、公爵令嬢であるアマンダ様だった。
お告げがでたとき、もうすぐ子供が生まれる予定があり、没落しているおかげでどこの派閥にも入っていないこの家は格好のカモフラージュになった。
しかも、万が一、王太子が婚約者に対してその気になったとしても、アマンダお嬢様は男なので取り返しの付かない事態にはならない。
そして、昨夜アマンダお嬢様は予定通り追放された。
神のお告げである異世界から現れた少女に王太子が心を奪われたから。
酷い話だと思う。
お告げのために、性別を偽って育てて、当て馬にされるなんて。
しかも、本人はまったくその事実をしらされないという。
だけれど、この家で過ごすお嬢様はとても幸せそうだった。
自由でのびのびしていて、子供の頃から一緒だったが一番笑顔をみたかもしれない。
まあ、お風呂とかベッドとか一緒に入ろうと誘われたときは困った。
お嬢様のことは好きだけれど、男性と一緒にお風呂もベッドもはいったことはない。
お嬢様はもちろん、お嬢様として侍女の私を気遣ってくれただけなんだけれど。
さて、どうやってお嬢様に事実を告げようか。
「明日はピクニックにいきましょう。早起きしてパンを焼いてあげるわ! あ、その一番大きいのはだめよ……むにゃあ……」
なんだ寝言か。お嬢様は幸せそうな顔で夢の中から私に語りかけた。
まあ、いいか。時間はたっぷりあるのだから。
私はお嬢様に実は男性であることを告げるのをあきらめて、お嬢様の新しい楽しい人生の一日をお供させていただくことにしたのであった。
ただしくは、お坊ちゃまというべきかもしれないけれど。
それはまた明日考えよう。
――第一章完結――
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