転校も転職も転生も失敗した俺が目指す未来

詩一

第1転 綾条あやのからの転生の勧め 

 死んだはずの元クラスメイトの綾条あやじょうあやのが言うには、異世界転生は本当にあるらしい。


 ワープの魔法を使う前、スプリングコートをバサッと脱いで女勇者の格好になった彼女は、文字通り変身していた。青色の髪と瞳。鉄製と思しき胸当てに皮革のスカート。それにロングブーツを履いていた。


「転職は散々だったみたいだけど、転生は上手くいくと良いね」


 彼女の言葉を思い出した。


 辛辣しんらつな北風が吹きすさぶビルの屋上。フェンスの向こう側。落下地点に人が来ないことを確認するために下を見ると眩暈めまいがした。胃液がせり上がってくる。

 昼に食べた社食のカレーライスを吐く前に始末をつけよう。この人生に。世界に。

 走馬灯がくるくる回る。幼少期の頃からの思い出が高速回転だ。最後に行きついたのは、昨日の記憶。綾条あやのとの会話だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る