第3話
「さて、これから引きこもるためにも色々準備しないとな。快適な引きこもりライフを送るには上質な寝具と充分な食糧、そして暇潰しの娯楽が必要だ」
何やら実感がこもっていることを言ってから熊翔は、今日から自分が住む部屋を調べ始める。
部屋は六畳半程度の居間にトイレ、そしてシャワーを浴びる部屋しかない「寝るためだけの部屋」といった感じだった。しかしほとんどのダンジョンマスターは異空間にある自分のダンジョンで生活しており、現実にある部屋は「ダンジョンの『入り口』を置くためだけの場所」という扱いなので、これぐらいの広さでも充分なのである。
だがダンジョンだけでなく、この部屋も引きこもるのに使うつもりの熊翔は、何の家具もない部屋を見て思わずため息を吐く。
「はぁ……。これは面倒臭いが一から買い集めないとな。まあ、生活費にもらった十万円があるからなんとかなるだろ。……とにかく今はメシが最優先だな」
今は丁度昼時であり、朝から特殊部隊にダンジョンアイランドに強制連行されて何も食べていない熊翔は、出前でも頼もうと携帯端末を操作する。
「へぇ……。流石はダンジョンアイランド。珍しい料理ばかりあるな」
携帯端末でダンジョンアイランド内にある料理店のページを見た熊翔が呟く。
料理店のページにある料理のほとんどは現代の似本にある料理だが、その材料に異世界でしか採れない材料が使われていた。こういった料理を食べられるのは、世界唯一の異世界交流地域の雹庫県、その中心地であるダンジョンアイランドだけであった。
「とりあえずこれでいいか。……? うおっ!?」
熊翔がダンジョンアイランド内のファーストフード店のページで、異世界の材料を使ったハンバーガーのセットを注文して支払いを済ませると、次の瞬間に彼の前に魔法陣が出現してその中からハンバーガーセットが出てきた。
「て、転移の魔術を使った瞬間デリバリー……? こ、これはスゲェな……」
注文をした次の瞬間に商品が届いたことに驚く熊翔だったが、気を取り直してハンバーガーセットを食べ終えると、嬉しそうな笑みを浮かべて携帯端末を見る。
「買い物に外に出るどころか受け取る必要もないとか……ダンジョンアイランド、最高すぎだろ」
怠け者の熊翔にとって転移の魔術を使ったデリバリーサービスほどありがたいものはなく、食事を終えた熊翔は早速、寝具や食料などを買い集めることにした。そして買い集めたソファーやクッション等の寝具を設置した彼は部屋の様子を見て満足そうに頷く。
「まあ、今はこんなものでいいだろ。……さて、今日は俺がダンジョンマスターになった記念すべき日だ。今から飲みますか」
これまでダンジョンマスターとなった者達はまず最初に、自らのダンジョンマスターとしての力やダンジョンの構造、ダンジョンに封印されている存在を確認していた。しかし熊翔はそれすらせずに寝具と一緒に購入した酒を飲み始め、その一時間後には酔い潰れて眠ってしまうのであった。
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