驚き、慄き、21世紀4

「皇雅君、皇雅君♪」


「…どうしたんだ?」


 心労の一因ながら最大の癒しでもあるのどかさんは、にま~とした満面の笑みを浮かべながら、こちらにカップを差し出した。


「コーヒーのお代わり下さいな~♪」


「…かしこまりました」


 何度か会う中で彼女の好みを把握していた俺はミルクと砂糖をふんだんに使用したコーヒーを差し出す。


「う~ん♪おいしい~♪褒めて遣わす~♪」


「ありがとうございます…というか何キャラ?」


「う~ん…わかんない♪」


 にこっと笑った彼女に「そうか。わからないか」と微笑みながら俺は業務へと戻る。なんたって閉店作業の途中なのだ。楽しいからといって、いつまでも話しておく訳にもいかない。


「自然にいちゃつくよね。あの二人」


「ああ。あんまりにも自然すぎて突っ込む気すらおきねぇよ」」


 嫉妬やらなんやは何処へやら、ジトッとした視線をこちらに向ける茉凛や怜哉を無視して、俺はマスターへと向き直った。


「すいません。騒がしくしてしまって…閉店作業に戻りますね」


「いや、構わないよ。売り上げにも貢献して貰ったからね。それに”オーナーも小説的に良いネタが入った”と喜んでいたから」


「すいません。オーナー居たんですか?」


 俺が会ったのは面接の時が最後だが、中々印象的な見た目をしていたので来ていたら直ぐに解るはずだ。


 少なくとも店内にそのような人物が来ていた様子はなかったのだが…。


 マスターは「流石の皇雅君でも気付かなかったみたいだね」と微笑んでーー。


「実は結構来てるんだよ?変装してるから解らなかっただろうけど、抜き打ちテストみたいな感じでね。それで不合格になる子も多いけど、皇雅君は全く問題無いから助かってるよ」


 流石、芸術家は変人が多い、と思いながら苦笑する。というか、変装来店での抜き打ちテストに合格と言われて素直に喜んで良いのやら…である。


「事情は解りましたが、明らかに自分達と解るような使い方は止めてください、と伝えて貰っても良いですか?正直ネタにされるのも微妙な気分ですし」


 困り果てた俺が眉尻を下げながら言えば、マスターは微笑んでーー。


「当然、そこら辺は大丈夫だよ。あくまでもネタとかインスピレーションの部分らしいから、人物像は全く違う物になる筈だから」


 ウィンクと共に心配ないと告げるマスターに溜め息を漏らせば「そろそろ帰らねぇとなぁ」という、怜哉の疲れ果てた声が届いた。


「あら、もう閉店時間過ぎてるわ!皇雅、ごめんね!」


 焦った様子で謝る母に「大凡の閉店作業は終わらせてるから…それに謝るならマスターに」と苦笑する。

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いつも頭が痛い俺は脳天気なキミが好き @osn33

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