驚き、慄き、21世紀3

 まあ、変な葛藤を抱えている明俊様は放っといてだ。俺は表面上の冷静さとは裏腹に内心穏やかではなかった。


 当然と言えば当然だが、思い思いに話す皆から、何処となく混ぜるな危険臭が漂っているからだ。母親とのどかさん、そして、明俊様。怜哉と母親。安全なのは茉凛くらいかーー。


「なんかトントン拍子で話が進んでよかったじゃない、のどか。でさ、のどか。のどかのお兄様って彼女居るの?」


「はぁ!?茉凛!お前何言ってんだ!?」


 …前言撤回。どうやら、別の所で問題が発生したようだった。


「うん?明兄に彼女?確か去年は居たよね?」


 その去年は居たという彼女さんと上手くいっている話なら良いのだが、明俊様の表情を見るにそうではないようだった。


「まあね…。それなりに名の知れた所のお嬢様だったんだけど…残念ながらお家柄を気にするような人だったから無理だったよ…」


 中規模とはいえ、御曹司で見た目も良く、将来も有望な人だろうに名家のお嬢様は何が不満だったのだろうか?俺には甚だ疑問だ。


「なるほど…じゃあ、今はフリーなんだ。ふふ、良い話聞いた」


 そう呟きながら満面の笑みを浮かべる茉凛の横で、怜哉が剣呑な表情を浮かべている。大人に憧れる大人びたJKとそれを目の当たりにして嫉妬する幼馴染の構図である。幸い明俊様はそこら辺ちゃんとした大人の男性なので、現役JKに現を抜かす事は無いだろうが、茉凛が心奪われているのならば、それだけで大問題なのだ。怜哉と復縁する可能性が非常に少なくなってしまう。


 …まあ、そもそもが怜哉が調子に乗って遊びまくっていたのが悪い上に、男性と違って女性の復縁率はそもそも高くない為、泣きっ面に蜂みたいなものだが、数少ない友人を見ている俺の心境としては非常に複雑である。


「あら?よく見たら怜哉君じゃない?久しぶりね!由紀祢(ゆきね)ちゃんは元気?」


「あ、はい。家のばばーー母親は元気してますよ、はい」


 しかも、大声を出したものだから家の母親にも存在がばれて、たじたじである。踏んだり蹴ったりだ。


「へぇ、君がのどかが親友と言っている茉凛さんか。のどかが大変お世話になってるようだね?本当にありがとう」


「いえいえ、私こそ、いつも仲良くさせて頂いてます。親友と言ってもらえて心から嬉しく思います」


 いつものヤンギャル感は何処へやら、清楚な雰囲気を醸し出しながら話す茉凛と明俊様の会話はとても和やかでーーそれを牙を剥きそうな表情を浮かべた怜哉は「由紀祢ちゃんの事、ババアとか言ったらダメでしょ!今度、言っとくからね!」と告げられ絶望した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る