尽きることのない悩みの日々8

 どこか言いくるめようとしている感じはしたものの、茉凛の言うことは非常に解りやすく的確だった。微妙に腑に落ちない点はあったが、現時点でこれ以上の答えはないだろう。


「ああ。解った。そうしよう」


「ええ。そうして頂戴。アンタ達はそのくらいで考えた方が丁度良いと思うし」


 彼女はそう言うと飲み終わったキャラメルマキアートの紙コップを持って立ち上がる。


「これ、ありがとう。美味しかったわ」


「いや、それは初めにも言ったが相談料だから気にするな。こちらこそ助かった。ありがとう」


「ふふっ、こうやって何か奢ってもらえるなら大歓迎よ。じゃあ、私は先に帰らせてもらうから。see you~!」


 そう言って茉凛は、スラリと伸びた美しい腕を後ろ手に振りながら颯爽と去って行った。風を切るかの如く颯爽とーー、金色の美しい髪を振りまき、周りの視線を攫いながらーー。


(さて、俺もそろそろ帰るとするか…)


 一人残された俺であったが、フラぺも飲み終わり、腑に落ちない点もあったものの疑問は粗方解消されたといっていい。特に考えたいこともなく、要件も終わったのだから、こうして座っている必要もない。


 18:17ーー。


 ホーム画面に表示された時間を見て、欠伸を1つ。何だかんだ1時間くらいは相談に乗ってもらっていた。彼女にとっても親友が関わることだから、というのもあるだろうが有難い限りである。


(今度会ったら何らかのお礼をするか…)


 そんなことを考えながら首を鳴らし、背伸びをしながら席を立つ。考えなくてはならない事はまだまだ沢山あったが、大きな問題が一つ、解決した感はあった。


 俺は茉凛に習うように颯爽と歩き出した。やはりというべきか、彼女の時のように誰かの視線を奪う様な事はなく、ただただ店員の「ありがとうございました」に見送られるだけである。


 しかし、気持ちが軽くなった分、足取りも軽い。やはり、相談に乗ってもらってよかったと感じたのだった。


 そして、俺は少し頬が緩まったことを感じながら家路に着くのだった。

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