放課後のどかさん注意報9
「娘も年頃だから、ああだこうだ言うつもりはなかったがーー彼氏は疎か男友達が居たという話さえ聞いたことがない。それなのに突然現れた君が、私の前であのような行動を取れば…私とて疑問に思うのは当然だと思わないかい?」
それは娘さんに言っては如何でしょうか?と言いたいところだが、抱き止め、頭をポンポンしたのは俺だ。
急に抱き着かれ、冷静さを失っていたとはいえ、あそこで当然のように受け入れれば、普段から、こういう事をしている関係だと思われても仕方がないだろう。
そして、先程の言葉である。君は娘の何なんだ。とりあえず、正直に答えてみることにした。
「のどかさんとは友達としてお付き合いさせて頂いております。秋月皇雅と申します。先程は勘違いさせるような行動を取りーー「友達だと?最近の友達とはあんなにも大胆な行動を取るものなのかい?」
俺はまあ、そうなるわな。と思ったが、これが真実なので、そうとしか言いようがない。しかし、納得させられるとも思えない。
そろそろ夏に差し掛かる頃。夜の気温も大分高く、地域柄湿気で不快感が凄まじい中、俺はお父様と対峙する。
汗が一筋、頬を伝う中、俺は更なる真実を重ねていくしかないと思い口を開いた。
「すいません。先程はのどかさんに急遽抱き着かれて気が動転しーー「私の目には落ち着いて見えたが?」
「…すいません。表情に出にくいタイプなんです。余りにも可愛いのどかさんに抱き着かれ、寧ろ、変に冷静になったというかーー「冷静なのか、動転したのかどっちなんだい?」
「すいません。とても純粋かつ可愛らしいのどかさんに抱き着かれ、変な方向に冷静になりましてーー「…まあ、そこは解ったが本当に友達なのかい?」
「はい。とても魅力的且つチャーミングな方だとは思っておりますが、今の私達の適切な関係を表す言葉は友達以外にないかとーー「…何となく解ってきたが君は今、全然冷静ではないんだな」
「はい。学園の姫と評されるのどかさんのお父様に問い詰められて、もうどうしたら良いかーー「解った。もう解ったから、とりあえず、適切な付き合いをしてくれれば構わないから。今後とも娘とは良き友達でいて欲しい」
どうやら真実を伝え続けることで信頼を得る事が出来たようだ。俺が「ありがとうございます」と頭を下げると、お父様は「ああ。もう遅いから早く帰りなさい」と言った後ーー。
「…全く困った青年に好かれた者だ」
と何やらを呟いて家の中へと戻っていた。
俺は何とか事なきを得た、と一息吐いて帰路へ着く。ガサゴソと音が聞こえた気がしたが、猫でも居たのだろうと思い、振り返ることはしなかった。
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