放課後のどかさん注意報7

 お洒落な今風のカフェチェーン。既に新フレーバーと心に決めた彼女が先に並び、その後ろで俺はメニューに目を通す。


 今の俺の目に入るのは甘いメニューばかりーーどうやら思っていたよりも頭が疲れているようだ。


 脳が疲れている時、人は糖分を欲すると言われることがあるが、俺はその事をよく体感している。普段よりもグルグルと思考が巡った時は決まって甘い物ばかりに目がいっていた。


 眠い時はカフェインに目がいくし、疲れた時はエナジードリンクが飲みたくなる。人間という生き物はそういう生き物だ。


「新フレーバーのきな粉フレーバーって何か美味しそうだと思ってたんだぁ♪面白そうだし♪皇雅君は何したの?」


「うん?俺か?俺はーー」


「お待たせ致しました!ホイップ二倍、キャラメルソース増々、シナモン追加、生チョコトッピングのアーモンドフラペですね!」


 タイミング良く現れた俺のアーモンドフラペを見て、彼女は目を点にしながら少し固まったかと思えば、此方を見てーー。


「ちょ~ヤバい!!マジウケる!!えっ!それ最早原型ないじゃん!!しかも、受け渡しラーメンみたいになってるし!!」


 涙を零す程の大爆笑に俺も思わず顔が綻んだ。


「注文お願いします。アーモンドフラペのホイップ2倍、キャラメルソースは増し増しで…あっ、後シナモン追加に生チョコをトッピングで」


「ちょっ、キメ顔イケボは止めてよ!お、面白過ぎてお腹痛い〜!!」


 ツボに入ったのか、ひ〜ひ〜言いながら笑う彼女に俺も楽しくなり、バリエーションを変えて繰り返しネタを披露する。


「も、もうっ!とりあえず座るよっ!皇雅君ったら偶に変なスイッチ入るんだからっ!」


「ハハハ、悪かったな。のどかさんの反応が良過ぎて止められなくなってしまった。そうだな、席に着くか」


 笑わせ過ぎたせいか、少し怒られてしまった。とはいえ、良い反応が見れたので反省はしていなかった。


 そして、俺のそんな態度に思う所があったのだろう。彼女は「皇雅君って本当に困った人っ」と少しだけプリプリと怒った様子を見せながら、空いた席へと向かうのだった。


 それぞれのドリンクを飲みながら、何気ない学校での日常について話す。愚痴に憤ったり、小エピソードに笑ったりしながら、俺達は穏やかな時を過ごした。


「それでねそれでねっ!皆で話してたんだけどーーあっ、ママからだ。…えっ?!もうこんな時間っ?!」


 スマホの着信を見て首を傾げ、時間を見て驚いている所を見るに、どうやら帰らなくてはいけない時間を過ぎたらしい。


「ママ〜!ごめん〜!秋月君と話しててーーえっ?!パパ帰ってきてるのっ?!うわ〜ん!どうしよう〜!」


 そして、何かしらを話した後、電話が終わるなり、あからさまにしょぼーんとしている彼女に俺は遠慮がちに話しかけた。


「…大丈夫か?」


 彼女は涙目で此方を見上げると、私、落ち込んでますを全開で表したような声でーー。


「…ママは初めてだし、直ぐに帰ったら大丈夫だと思うって言ってたけど…パパ、そういうの厳しいから…」

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