放課後のどかさん注意報5
「何か悪かったわね。習い事休ませることになってさ」
「いや、まあ、良いんだ。趣味みたいなもんだからな。テスト前は休んでる事も多い」
「そうなんだ。なら良いけど」
実際、趣味のようなものなので、その点に関しては何の問題もない。
「えっ!じゃあ一緒に帰れたりするの?」
ジムが休みになり放課後の予定が無くなった今、暇になったのは事実だ。一緒に帰る事は出来るだろう。
というか、そんなに期待に満ちた笑顔で言われたら帰らないという選択肢があるのだろうか?否、無い。
「ああ。勿論だとも」
「やった〜♪秋月君と一緒に帰れるなんて嬉しいなぁ♪」
満面のにぱ〜を頂き、俺は気絶させられた事すら許せると思った。寧ろ、感謝したくなってきた。
「ありがとう。茉凛さん」
「…あのさ。何とな〜くアンタの考えてること解るんだけどさ。感謝されても全然嬉しくないんだけど…」
俺が折角心からの感謝を伝えたと言うのに、彼女は虫唾が走ったと腕を擦り、軽蔑に満ちた視線を送ってきた。何故だ?
「ねぇねぇ!そしたら、帰りにカフェとか寄ろうよ!私、試してみたい新フレーバーがあってねーー」
「のどか。秋月は一応怪我人なんだから、あんまり無理させちゃ駄目よ?」
「…は〜い。解りました〜」
満面の笑みから一転、しょぼくれたような顔で返事をする彼女を見て苦笑する。
「まあ、そうだな。とはいえ、俺も多少時間を潰して帰った方が都合が良い面もある。帰りながら様子を見て、気分が悪くなったりしなければ行ってみる、というのはどうだ?」
実際、母親に学校で気を失ってジムに行かなかった事を説明するよりも、ジムに行った体にして何食わぬ顔で帰った方が気が楽ではあった。
俺が死にかけたせいもあるが、家の母親は何かのスイッチが入ると病的に過保護になったり、ヒステリックを起こす事がある。倒れたなんて話せば、どうなるか解ったものではない。
それに、万が一の際はノックアウトされたとでも言えばいい。周りに口裏を合わせて貰う必要はあるが別に嘘でもない。場所がジムではなく、学校と言うだけの話だ。
「…アンタがそれで良いなら、それで良いんじゃない?」
「ああ。まあ、家庭事情でちょっとな。心配掛けて済まなかった」
俺が呆れた様子の茉凛に頭を下げれば「原因はアンタだけど、気絶させたのは私だから心配しただけ」とそっぽを向いた。
「ありがとう〜♪でもね、茉凛の言う通りな部分もあるから…体調悪くなったら直ぐに言ってね?」
「勿論だ。無理はしない」
喜び半分、心配半分といった様子で此方を覗き見る彼女に、俺は笑顔を浮かべながら頷くのだった。
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