放課後のどかさん注意報4
俺は追い回されていた。
鬼の形相で追いかけて来る茉凛だ。
怜哉と共に品がないと話していた所を聞かれてしまったのだ。
既に怜哉は亡き者となっている。彼女の手に持つ参考書によってーー。
「Are you ready for this?」
遂には行き止まりによって阻まれ、俺も捕まり、そう微笑みかけられた。
そして、振り上げられる参考書。俺の心は恐怖に凍りついていた。
「ち、違うんだ!茉凛さん!俺はただ言葉選びを気を付けた方がいいと言う意味で言った訳で、普段から品性が足りないと思っているわけではーー」
「ちょ、ちょっとこーー、秋月君!?どうしたの!?落ち着いて!?」
「…あれ?ここは…保健室?」
俺は辺りを見回して首を傾げ、納得する。
「なんだ。夢だったのか…」
「どんな夢見てんのよ?アンタ?」
心配そうな表情を浮かべるのどかさんの隣には、不機嫌そうな表情で不貞腐れた茉凛ーー確かに今のは失礼だった。
「悪かった。参考書を投げつけられたのが思った以上にトラウマになってたようだ…」
「…それは私も悪かったわよ。まさか、意識を失うとは思ってなかったし。でも、付き合ってもないのに手を出すのは無しでしょ?そこは反省してんの?」
茉凛はバツの悪そうな顔から一転、険のある表情を浮かべる。答え次第では許さないと言わんばかりの態度であるが、冷静さを取り戻した今なら彼女のその態度も理解出来る。
「そうだな。確かに誠実とは言えないな。悪かった。のどかさんも済まない」
如何にそういう雰囲気であったとはいえ、お互いの関係性を考えれば流されてはいけなかった。別に軽い気持ちで行動に移した訳ではないが、踏まなくてはならない段階を何段か飛ばしてしまったのは間違いなかった。
「…ううん。大丈夫だよ〜。ちょっと驚いたけどね〜」
本当に気にしてないといった表情で優しく微笑む彼女を見ていると思う所もあるが、今回はこれで正解だったのかもしれない。
「流石に参考書投げるのはどうかと思うが、冷静さを取り戻させてくれたことについては感謝している。ありがとう。茉凛さん」
「本当よ。…はぁ。正直言えば、自分でもお節介過ぎるとは思うけどさ。私はそういうのから始まった関係は上手くいかないと思ってるから。そこはしっかりしなよ?」
彼女の表情は何処か苦々しく自嘲するようでもあった。きっと彼女自身、何かしらの経験があって物を言っているのだろう。
そういう部分においては経験がある彼女の方が大人ーーそこは有り難い忠告として受け取っておこう。
「肝に命じるよ。さて、今日は帰るか。流石にジムに行くのもな…一日、様子を見た方が良いだろうし」
派手に倒れた割には大したことはなかったようだ。寝ている間にスッキリした。とはいえ、一度は意識を失っていたのだから、今日のジムは大事を取って休むべきだろう。
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