放課後のどかさん注意報3
少し身を捩った後に潤んだ瞳で此方を見上げた彼女ーー、強い熱と艶やかな雰囲気が漂い、俺は頭がクラリとする感覚を覚える。
「のどか…さん」
「…皇雅君…」
小さく紡がれた名前に悲鳴を上げたかの如く強く打った鼓動ーー期待するような視線に俺の神経が研ぎ澄まされていく。
そして、集中力がピークを向え、ある意味冷静になったが故に大胆になったのかもしれない。ーー何よりスイッチは疾うに押されていた。
俺は彼女の顎に優しく触れる。
大きな瞳が揺れて更に大きくなるも、嫌がるような素振りはない。もしかしたら、彼女の方もこの雰囲気に酔っているのかもしれないと思った。
オレンジ色に染まる空。
静まり返った放課後の教室。
カチリカチリと時を刻むアナログ時計の針の音ーー。二人を遮る物は何もなかった。
更に近づく二人の距離。僅かな吐息さえも感じる事が出来るくらいの距離に、心は否応なしにも昂った。
彼女の瞳が優しい弧を描きながら閉じられる。ーー状況は整っていた。
「のどか〜?勉強は順ちーーwhat?! f*cking guy!!」
…遮る物は無かったが、遮る者は居た。
「ぐはぁっ!!」
「こ、皇雅君っ?!」
側頭部に強い衝撃を受け、星が飛んだ。そして、グラグラと脳が揺れて意識が飛んでいく。
何だか妙にスローモーションに見える状況において、鬼の形相で近付いて来る茉凛と地面に転がる参考書ーー犯人と凶器が一瞬で解る推理小説程つまらない物はなかった。
薄れ行く意識の中、容赦無く飛んでくるアメリカンな罵声を耳に入れながら俺は思うのだった。
(本当、品が無いよなぁ…茉凛さんーー)
…。
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