大和さんの使用は用法用量を守って…4
帰り道。等間隔に並んだ街路樹と外灯をぼんやりと眺めながら、ゆっくり歩いた。楽しく、心温まる時間の後、未だ思考は緩慢だ。
寒いという程でも無いが、温度差から冷えを感じる夕暮れ時ーー行き交う人の少なさに覚える寂寥感は徐々に胸に広がっていく。
こういう時、俺は人は欲深い生き物だと常々思うのだ。今日という一日は日常に湧いた特別な一日。満足感に浸り、明日を迎えれば良いだけの話である。
しかし、この僅かな時間をまるで当たり前のように感じてしまう時が来るから、感謝する気持ちが無くなり、寧ろ、この寂しさをどう解消すれば良いのか、と喚き散らすが如く、己の胸を詰まらせていく。
即ち、際限ない欲の権化が人なのだと、感じてしまう。
そんな自分の感情を俺は軽蔑する。一日を感謝で終える事の出来ない、自分自身の感情を否定し続けた。
等間隔に続いていた街路樹と外灯。その2つが強い光によって色味を変えた。
小さな駐車場が併設した何の変哲もないコンビニ。俺は吸い寄せられるかのように中へと入っていった。
誰に放たれたか解らない、いらっしゃいませに小さく頭を下げ、理由なく店内を歩き回り、どうして、コンビニに入ったのだろう、と意味もなくコーヒーを手に取った。
これではただの小さな浪費で、ただの欲でしかなくてーー。
そして、レジに並ぶ最後の棚。コンビニスイーツが敷き詰められたデザートコーナーで、俺は心に穏やかな暖かさを思い出したのだ。
それはあの公園で貰ったシュークリームだった。
カスタードクリームのオードソックスなシュークリーム。他にも生クリームの物や少し高いグレードの高い物もあったが、彼女のレジ袋はこればかり詰まっていた。
単純に、このシュークリームが好きなのだろう。そして、その事に何となく彼女らしさを感じた。
人は確かに欲深き生き物…だが、同時に思い出す事の出来る生き物でもある。
どうして、あの時、胸を踊らせたのか?
どうして、暖かい気持ちになったのか?
どうして、気になるようになったのか?はたまたーー。
多くの出来事、感情を思い出せば、これ程の物はなかったと思い返すことが出来るのだ。
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