大和さんの使用は用法用量を守って…3
どうやら、俺は頭の回転が行き過ぎて未来に行っていたようだ。おしぼりを投げるという行動は褒められた物ではないが、冷静さを取り戻させてくれた茉凛には感謝したいと思う。
さておき、とりあえずは冗談ということで事なきを得たプロポーズの後、俺達は連絡先を交換した。女友達なんて当然零だったので、初の女友達と言えよう。
「帰ったら連絡するね!」
「ああ、解った」
なるほど。ならば何時連絡が着ても秒で返せるよう、スマホの画面を注視せねばーー。
「秋月。一応、私と連絡先交換しときなよ。いきなり結婚とか言うし、心配だから」
俺がスマホを取り出し、注視を開始しようとしていたら、茉凛がアプリの友達追加画面を見せてきた。口は悪いが大和さんの事になると少々暴走気味な俺を心配してくれたのだろう。中々素晴らしい女性だ。
…まあ、その割には糠に涌いた蛆でも見るような目で此方を見ていたが、気のせいだろう。
「今日は本当、面白いもん見せてもらったわ!またな!」
「面白いは余計だぞ。…しかし、まあ、なんだ。俺も良いリラックスになった。ありがとな」
「良いってことよ!気にすんな!」
少年のような笑顔で手を振る怜哉に、俺も軽く手を振り返した。今、思えばだが、彼にも多少の打算があったのだろう。女友達と言っていたが茉凛との関係は複雑に見えた。
簡単に言えば、茉凛からの誘いならば会えるが、怜哉からの誘いは断られる。俺の予想に過ぎないが、そんな関係なのだと思う。だから、どうしても俺に来て欲しかったし、このチャンスを逃したくなかったのだろう。
あの"サプライズ"はそういう弱さの現れだと考える。
しかし、怜哉が俺に女友達が出来たら良いと考えていたのも、また事実だ。彼は常日頃から女性の良さを熱弁していたし、冗談がてら紹介を頼めば、割と本気で良い相手が居たら、と言っていた。
その結果が今日ならば、怜哉の人を見る目は確かと言わざるを得ない。
「秋月君!また後でね!」
「ああ、また後で」
何度も此方を振り返り、何度も手を振る大和のどか。俺は彼女の姿が見えなくなるまで手を振り返し、その場を後にするのだった。
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