大和さんの使用は用法用量を守って…2

「いや〜、良いもん見せてもらったぜぇ!つうか、ソファーに転生って!あの皇雅が、あそこまで壊れると思わなかったわ!」


「いや、壊れたというか、そうじゃないとあの状況に対する整合性がーー」


「…何が整合性よ。馬鹿じゃないの?」


 爆笑する怜哉と軽蔑するような視線をくれる茉凛に挟まれ、俺は頭を押さえながら嘆息する。


「ええ〜!ソファー転生、めっちゃウケるじゃん!ほんっと茉凛は堅いな〜」


「ウケるとかそういう話じゃないーーていうか、のどかものどかよ!普通男友達の上とか座んないでしょ!何考えてるの?!」


「いや、ジョンソンさん。それは違うぞ?座り心地の良いソファーがあったら、人は腰掛けたくなるものでーー」


「Shut Up!秋月!アンタが喋るとややこしくなるから黙ってなさい!後、嫌な気分になるからジョンソンさんは止めて!茉凛で良いから!」


 俺の言葉をバッサリ切り捨てると、茉凛は大和さんへと視線を戻した。どうやら俺の主張はお気に召さなかったらしい。


「あ〜!茉凛ずるい!じゃあさ秋月君!私の事はのどかって呼んでよ♪」


「あ、えっ?じゃあ、のどか…さん?」


「は〜い!私が大和のどかで〜す♪」


 流石にそこじゃないだろう?とは思ったが、満面のにま〜が可愛過ぎて、全てが許されてしまった。


 なるほど。これが俗に言う可愛いは正義というヤツか。


「違うでしょ!そこじゃないでしょ!ちゃんと私の話を聞け!」


 俺は全てを許したが、どうやら茉凛は許せなかったようである。


「まあまあ、落ち着けって。本人が良いってんなら良いんじゃねぇ?つうか、大体お前さ。人にどうこう言える程、品が良い訳でもーー」


「Zip it! Shut your f*cking mouth!」


 見兼ねた怜哉が宥めに掛かるが、余計な事を言おうとしたものだから、当然の如くとばっちりを受けていた。


(…というか、"その汚い口を閉じろ"なんて正に品も糞もないな)


 そんな事を考えながら二人の喧嘩を眺めていると不意に、くいくいと袖が引っ張られる。


「うん?どうかしたのか?」


 振り返れば、恥ずかしげな表情でスマホを抱える大和のどか。モジモジしながら、此方を上目遣いで見上げている。


「あのね、秋月君が良かったらね、連絡先交換したいなぁ〜って。メッセとか送りたいし…」


 その瞬間、俺の思考はフル回転した。この世の全てを理解出来るので無いかというくらいに、頭の中のホワイトボードに物凄いスピードで文字が羅列されていく。


 連絡先を交換したいということは、仲良くなりたいということか、仲良くなりたいということは、それなりの好感を得ているということで、それなりの好感を得ているということはーー。



「結婚しよう」



「…えっ?!」


 俺が出来る限りの最高の笑顔でプロポーズすると同時に、何処からともなく飛来したおしぼりが側頭部にめり込んだ。

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