頭痛9割、友人1割、大和さんプライスレス
日曜日。
数少ない友人の一人に突然呼び出された俺は、指定された公園へと向かった。以前、大和さんにプレゼントされたシュークリームを食べた公園である。
ベンチに座りながら、あの時の事を思い出すと、今でもニヤけてしまうのは誰にも言えない秘密だ。
暦の上ではまだ夏と呼ぶには早い季節だが、地域柄、既に気温は高く、日によっては夏と何ら変わらないくらいの暑さになる。
そして、今日が正にその日であり、機会を逃し、切り損なった髪が頭に張り付くのを鬱陶しく感じていた。
途中、堪らず、自販機でスポーツドリンクを買って呷り、一息吐く。暑さに勘違いしたのか、早めに鳴き始めた蝉の音に煩わしさを感じながら、俺は公園で待っているであろう友人の分の飲み物を買って目的地へと急いだ。
「よう。皇雅。わりぃな。貴重な休みに呼び出しちまって」
「いや、気にすんな。流石に友達付き合いがなさ過ぎると思っていたところだ」
自販機で買ったスポーツドリンクを投げれば、俺の数少ない友人、日野怜哉(ひの れいや)は「サンキュー」と受け取り、笑みを見せた。
真っ赤な髪に気怠げな瞳、だらしなくもお洒落に着崩した服ーー怜哉は見ての通りの不良だ。しかも、高校に入ってから多少大人しくなった部分もあるが、中学の時は所謂ヘッドという立場にあった。
「それで話っていうのは?」
「まあ、別に大した話でもねぇんだがよ。ちょいと長くなるかもしれねぇから、近くのファミレスにでも行こうぜ?」
「?…ああ、わかった。じゃあ、行くか」
仲の良くない人間に同じ事を言われれば、先に用件でも聞いただろうが、怜哉ならば何の心配も要らないだろう。別の小・中学校に通ってはいたものの、付き合い自体は10年近い。
どうしようもない事はするし、粗行も悪いが、こと友人関係においては、これ程信頼出来る奴はいないーー日野怜哉はそういう男だった。
「まあ、女性関係はどうしようもないがな」
「おい。声に出てんぞ?」
睨みつける様な視線をくれる怜哉に、俺は肩を竦めて鼻を鳴らす。
「それは悪かったな。しかし、派手に遊んで、本命に見切りをつけられたのはなぁ…まあ、それだけモテるのは羨ましくもあるが」
日野は野性味の溢れるイケメンだ。その上、ある意味突き抜けた存在でもあるから非常にモテる。そして、適度に遊ぶ。だから、女性関係は派手である。
しかし、そのせいで付き合っていた本命に振られたのは阿呆としか言いようがない。というか、そこまで来ると一周回って、バ可愛い。
「…お前じゃなかったら絶対殴ってたわ」
「そうか。俺は俺だったことに感謝しとかないとな」
「ちげぇねぇ」
俺達はそんな軽口を叩きながら、目的地のファミレスへと向かうのだった。
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