今日も世界は頭痛を呼ぶ2

 社会的には単なる高校2年生と言ったが、社会的ではないのならば何なのか?特に勿体振る話でもないので言うならば、俺はIQが高い。標準偏差15で130を叩き出すのだから、まあ、非常に高いと言っても過言ではないだろう。


 しかし、俺の場合はこの生まれ持った才能を、何の役にも立たせることが出来ていないのだが…。


 何故、何の役にも立っていないのかと言えば要因は幾つか存在する。


 先ず、挙げられるのは中学一年から高校一年まで患っていた病気だ。まあ、病名を上げてもピンとこない人も多いだろうから、簡単に説明すれば、ホルモンが出過ぎて、体が頑張り過ぎる病気だと思ってくれれば良い。


 一番酷い時は寝ててもマラソンしてるのと同じくらい体が頑張っていた訳だが、俺はこの病気のせいで全く勉強に集中出来なかったのだ。


 更に言えば家は貧乏だった。母子家庭ながら母親の体は強くなく収入は厳しかった。その上、元父親はーーまあ、よくある話だ。だから、俺は中学生の時から新聞配達をしていた。そのせいもあって、体が怠いのは単に無理をしているせいだろうと思っていた。


 そんな状況が年単位で続いた結果、気付かぬ間に病状が悪化し重症化ーー高校入学前の春休み、新聞配達中に倒れ、病院に緊急搬送された。


 そして、入院の末に手術ーー。若くして臓器摘出を経験。その結果、病状は反転、全く頑張る気力が沸かない無気力人間と化してしまった訳である。


 まあ、ホルモン薬を飲んでいれば数値上は問題無いということを加味すれば、単にその経験から頑張ることに意味を見出だせなくなってしまっただけなのかもしれないが、真相は不明だ。


 何にせよ、無気力な俺にとって、IQが高いという才能は本当に無駄な才能でしかないと思うのだ。


 なまじ頑張らなくても、それなりの結果が出てしまうせいで、より無気力になってしまう上に、多くの可能性を展開してしまうせいか、思考が常に頭を巡って頭痛がーー。


「…うん?」


 放課後の廊下。背中辺りをツンツンと突かれたので振り返れば、頬にムニッと人差し指がめり込んだ。


 こんな幼稚な悪戯をするのは誰だと訝しげに思いながら視線を下げれば、そこには何時も通りのぽけ〜とした顔に悪戯っ子の様な、にま〜とした笑顔で背伸びをする大和のどかの姿があった。



「引っ掛かったぁ!ウケる〜!」



 お腹を抱えて爆笑する彼女。


 呆気に取られている俺。


「秋月君、また明日ね〜!」


 満面の笑みで手を振る彼女は、スキップ気味に弾みながら階段の奥へと消えて行った。


 カラスの鳴き声で覚醒した思考。夕日差し込む廊下に残された俺は、彼女の指が触れた頬に手をやると少し擦ってみる。


「…なんと言うか…青春だな…」


 そして、俺はだらしない笑みを浮かべながら、しみじみと喜びを噛み締めるのだった。

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