10歳、夏(2)

見たままを描いてはいけないーー過去を思い出して絵を描くのに夢中になっていた俺はそのことをすっかり失念していた。


子供の落書きぐらいにはそこまでうるさく言われることはない。しかし俺があまりにも上手に描きすぎて、アルフォンソが宗教的指導者の立場だったことが重なり、おれは10歳にして罰せられることになった。


俺は腕を縛られて村のはずれにある秘跡とよばれる場所に連れて行かれた。そこで俺は縄で吊るされた。アルフォンソは鞭で俺を打った。何度も!激痛が走る。10歳の俺の薄い肌を硬い鞭が容赦なく何度も傷つける。


俺は痛みで頭が真っ白になった。一瞬だけ意識が飛んだ。そして目を開けると、あたり一面真っ白な世界にいて、この世のものとは思えないぼんやりと光る何者かの姿があった。


「グイドよ、またの名をミケランジェロ・メリージよ。あなたは自分の過去に気が付きましたね」


「あなたは誰ですか。天使様ですか」


「私はあなたに助言を与える者です。私のことを女神と呼ぶ人もいます」


「女神様ですか。 つまりヘーラー、アテーナー、アフロディーテのようなものですか」


「そのようなものと考えていただいて結構です」


「私はなぜこのように苦しんでいるんです。何も悪いことはしてないのに。ただ絵を描いただけなのに」


「前世を思い出したあなたは絵を描くことを止めることはできないでしょう。この村から出るのです。そして冒険者となり自分の力で生きる術を学びなさい」


そして俺は眠りにつくように意識を失った。

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