第1楽章 Andante 歩くように19

夜に涙を流しすぎて腫れた目。

これからなんて連絡すればいいのか不安な顔。


マッチングアプリなんてやらなきゃこんな経験しなくて済んだのに。


自分の体のことなんかよりも、人を裏切ったことや同時に2人気になってしまったこと、自分の決断力の甘さを思い出すたびにまた、涙が出そうになった。


今はそんなことを考えている場合ではない、仕事にいかなきゃ、、、

えっと、準備・・・まず、、、・・・。


頭が全く働かない。

それでも、いつもの習慣が少しずつもとの自分に戻してくれているようだった。

洗顔をし、メイクをして、水筒にお茶を入れて出発。


電車で、ひろくんにお別れのLINE文章を考える。


毎日朝昼晩LINEをした異性は、初めてだった。

大きくて、少しかわいらしい感じもあって、でも、頼り甲斐がありそうで、もっと過ごしていたかった。

こんなことを考えては、筆が進まない。

また、泣きそうになる。


「突然ごめんなさい。

付き合えないことになってしまいました。

本当にごめんなさい。」


このあと、ごめんなさいしか、打てなくなってきたので、一旦先輩にLINEを入れる。


「こんな文章でいいかな?」


仕事の休憩時に返事を確認した。

「まぁ、いいんじゃない?そのまま既読もつけずLINEもしちゃだめ。

相手に未練を残したらダメなんだよ。

嫌われなきゃ。

相手が大事なら。

未練を残したら進めなくなっちゃうでしょ。」


その当時の自分は、なんで?なんで理由をいっちゃいけないの?そんな突然別れを言われたら悲しいよ、と思っていた。

たかだか、マッチングアプリであっただけ、たった1度あっただけ。やりとりをしたといっても3週間くらい恋愛ごっこのようなやりとりをしていただけなのに、不思議なものだ。それくらいには、相手に対して深い気持ちがあったわけだ。


送るしかない。


あの短い残酷な文章をひろくんに送る。


そっと。


そして、また涙が流れた。


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