第1楽章 Andante 歩くように17

それでも小さな声でしか言えなかった。

感じたことがない。というか絶対、違う気がする。もう言葉に表せないくらい何か拷問にちかいものがあった、、、。


「大丈夫だよ。すぐなれてくるからね」


それが4、5分は続いたのだろうか。

私の眉間はきっと苦痛で歪んでいたことだろう・・・。

ずっと、ずっと痛かった。


そんなことは気づかずに、こうじさんは動いた後止まって、そして抜いた。

「初めてのセックスをもらえて嬉しかったよ」


と、言われたがもう自分の体がどうなっているのか心配で仕方がない。

「血がでてるから、拭いてあげる。」


え、血が出てるだと・・・?

「お手洗いお借りします。」


行ってみると、血が止まらない。


でも、まぁティッシュを詰めてなんとか帰るしかない・・・。


時間も時間だったので、服を着て急いで支度をする。

「シャワー浴びていかなくて大丈夫?」


「うん、大丈夫、ありがとう。」


その後、駅まで送ってもらう。

歩きながら、こんなことを言う。

「俺、いつもタクシーか車だから、電車はもちろんだけど、改札口もほとんどいったことがないんだよね。今日は久しぶりだなぁ。」


あっそうですか。いちいち癪なんだよなぁ、とか思いつつ、私の頭の中はひろくんへの懺悔でいっぱいだった。


こんなことをしてしまった人間が、ひろくんと付き合う資格があるのか。

なんで、こんなことになっちゃったんだろう。

なんで、断らなかったの?

え、なんてLINEすればいいの。


LINEを開くと、いつも23時にチャットしあっていたから、ひろくんからの連絡がきていた。

「今日は忙しかったかな? Yとの会話こんなに楽しみにしている自分に驚くよ。今日もお疲れ様。」

そして、おやすみのスタンプが送られてきていた。


途端に、涙が止まらない。


別に付き合っているわけじゃない。

それでも、この人との未来があるかもしれなかった。

自衛隊についても、調べていた。所属している部隊が、どんな訓練をしているかとか、家族になったらどんな手当があって、どんなところで住むことが考えられて、子供ができたら、きっと自衛隊のお父さんがいたら、なんとなくしっかりしそうだなとか・・・。


また会う約束していたのに。

今度は告白をしてもらえるはずだったのに。


どうすればいいの_____?


深夜の電車の中、

涙がいくらこぼれても、ほとんど人はいない。


どうしよう、どうしよう、どうしよう。


こうじさんからは「今日は、ありがとう。幸せだね。」と連絡が入ってきた。

私は「また、会えるのを楽しみにしているね。」と返事をし、その瞬間、自分が例えこの経営者に騙されていたとしても、その景色を焼き付けておこう、まだ自分の人生は始まったばかりだ、と言い聞かせていた。


まだあって2回目。

そんなに好きな相手でもない。

でも、考え方は全部がスマート。

なんでも知ってそうな安心感。

全て魅力的だったのは事実だ。


でも、なんとなく辛かった。

すでに、別れるかもしれない、遊ばれているかもしれない、

こういった考えが、浮かんでいた。

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