第1楽章 Andante 歩くように13

1週間で4人に会うのは、結構気持ち的にはハードだったが、それでも得たものは大きかった。人に見つめられるとこんなに気持ちがドキドキするんだ、とか、毎日相手を思い遣ったLINEをしているとこんなに胸がワクワクするのか、とか。


気持ち的に、優先順位は、

ひろくん>こうじさん

だった。

意外なことに、こうじさんにはあんなに素直に「なんか違うと思う」と伝えたのに、2位に留まっていたのは、おそらく抑えきれない好奇心だ。

りょうさんとりゅうさんは、好きだったけど異性としてみれていない自分がいた。どこかでお兄ちゃんのような感覚。手を繋ぐとかキスしたいとか、そういうイメージもわかなかった。


さ、ここで未熟な若者の脳みそを詳にしますと、このような感覚でしたの。

結婚して、幸せな家庭を築けそうなのは、断然トップでひろくん。

でも、こうじさんだったらきっとお金には困らせないでいてくれる。私の知らない経験をたっくさんさせてくれる。もしかしたら育児も全部私1人に降り注ぐ気がするけれど、他の人では経験できないことを経験させてくれる気がする。


え、お金で人を判断するの?

それで、本当に大丈夫?


いや、逆にお金がない生活でこの先、楽しいの?一生働いたって、年収が決まってれば制限があるんだよ?経営者には、不安定な分、その制限がないんだぜ?


うーーーん。。。


と、よくわからない戦いが自分の中で巻き起こっていたのです。


そんなことを考えている1週間でした。


そうして、もやもやは消えないまま、ひろくんとは次のデートの約束とプランについてLINEで話し合い、しかし頭の片隅ではこうじさんが消えない、というような日々が続きました。


りゅうさんとりょうさんには、なんとか今の自分の気持ちを伝えたいと思っていて、

電話をさせてほしいと、連絡をした。

お菓子職人のりゅうさんに、「ごめんなさい。やっぱ付き合えない。他にいい人ができそうなんだ。」と伝えると、「そんなかしこまらなくていいんだよ、連絡ありがとうね。じゃぁね。」とやさしく電話を切ってくれた。

心が少しずつ軽くなって行く。


次はりょうさんだ。

「ごめんなさい。結局、友情と恋愛の違いがわからなくて。多分、付き合えない。」

出張先で、私の答えを待ってくれていたりょうさんは、電話越しからでも落胆しているのが伝わってきた。

「他に好きな人ができたってこと?」

「それはどうか、自分でも自分の気持ちがわからないけれど、一応アプリはやめるつもり。」

「俺も、Yからの連絡待ってたし、Yと付き合えると信じてマッチングアプリやめたんだよ。」

「・・・そうなんだ。・・・ごめんね。」


りょうさんは、泣いていた。

私の無自覚な行動で、人を1人泣かせてしまった。

びっくりした・・・。


見た目もダメな自分を、たった数週間で沢山知ろうとしてくれて、中身をしっかり知ってもらって好きになってくれた異性がいたという事実。驚いた。本当に驚いていた。たかだか、男性なんてみんな外面がかわいくて綺麗で、おしゃれができる人しか付き合わないんだろと思っていたから・・・。


いい人って存在するんだなぁ・・・。と。

本当にいい人なんだな、彼は、、、。


それでも、それでも自分は、

彼のことを異性としては、好きになれなかった。


だからこそ、本気で彼の幸せを願うしかなかった。


「電話切るよ、、、。」

そう伝えると、泣きながら、


「うん、切ってくれ、、、」

震えた声だった。


「ありがとう。」

そう伝えて、電話を切った。

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