第1楽章 Andante 歩くように12

向かったところは、タワーマンションの中のラウンジのような場所だった。


といっても、当時の自分はラウンジなんて場所もしらないから、隠れ家のようなレストランと感じていた。

エレベーターを上がった後、壁に何やらカードをかざして開いたドア。かっこよすぎた、、、。


「俺は、会食後だからそんなにお腹すいていないんだけど、好きなもの選んでいいからね。もちろん、奢りだからね」


と、言われたもののびっくりしてしまった。

正直、少し期待していたからお腹をすかしてきてしまっていた。

なのに、こうじさんは食べないと言う。適当に、お酒を頼んだ後、「どうぞ」と優しい声でメニュー表を渡されるが、相手が食べないのに私だけ食べれないよぉ・・・と、己のチキン爆発。早々に諦めて、リンゴジュースを頼んだ。


「それでいいの?」とかなんとか言われつつ、オーダーしてくれて、また話が始まる。

今度は、結構私に質問してくれてそれに答えた。

でも、言葉の端々で気になることが増えていった。


それは、全部金銭面的なことをもれなくつぶやくことだ。

「カーネギーホールはいくらしたよ、でもすっごくよかったよ。」「世界のおいしいものは大好きだから、そのためだけにイタリアや中国に行くこともあるよ。旅費はいくらとかになっちゃうけどね」などなど。


経営者って、みんなお金について言うのが好きなのかな・・・。

まわりに経営者いないから、わからないや・・・。ちょっと苦痛だな。


そうして、だんだん募っていったモヤモヤ。


なんか違う気がしてきた。

お金がある人とない人の差を、それとなく会話に挟んでくるのが、なんだか嫌だった。


「どうする?もしよかったら俺の部屋から夜景みない?すごい綺麗なんだよ。見せてあげたいな。」


(いや、流石にもう21時だ。帰宅して22時かぁ。帰りたい。)


「いえ、少し遅くなってしまったのでここで帰りたいと思います。今日はありがとうございます」


と、どことなく丁寧になってしまった。そうして別れ際。

「素敵な人を見つけてね。」


と言われた。

・・・は?


おまえもだろ?

なんで、そんな上から目線なんだろう・・・。なんだかなぁ。

お金の話ばっかだし、インドア派がいいとか言ってたけど、陰キャっていうのは、そもそもマッチングアプリやるのだって必死でやってるんだぞ。あんな金の亡者を誰が好きになるんだか、ったく・・・。


こうして、イライラしながらこいつはない、と思い始めたので、LINEを入れる。


「今日はありがとうございました。

色々あって話せて嬉しかったです。

ただ、少し違うのかなって思いました。

ありがとうございました。」


すると、一言。

「ありがとう。素敵な人を見つけてね。」


・・・またか!!!!!

この余裕な感じが腹たつううううう。


こうして4人に会ってみて、一通り自分の区切りがついたわけです。

さて、

どう選ぶ。

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