第1楽章 Andante 歩くように⑥

***

こんなように日々は過ぎていき、

___10日後。


私は、沼にハマっていく感覚に気づいていただろうか。


否。


 それは、まずストレスとなって現れた。

日々気になる通知、足あと。それに、チャットの数。空き時間があれば、すぐに人前から離れアプリを開いた。


 朝は確認。昼は、返せてない分の返事。夜は、また返事が来ていた人への返事やチャット。いつしか、疲れていた。

(何を返せばいい?)

(そもそも好きかどうかもわからないけど、とりあえず会話してる今の状況って無駄なの?必要なの?)

普段の就寝時間から気付けば30分、1時間、2時間と大幅に後倒しになっていった。


 チャットの頻度も私をイラつかせた。そもそもLINEだって既読つけることが返事をつけることと同じだと思っていたスマホズボラ精神の私には、正直苦痛だった。1日3回、欠かさず開いて返事するなんて・・・どうかしてる。こんな一個一個返事を打ったり読んでる時間に、もっと有益な情報や読みたいものがたくさんあるのに・・・。


 いつしか溜まって行ったストレスは、ある目標を見出してくれた。

もう、恋人の探し方なんてわからない。自分の写真がおおやけになっているのも、正直不安だ。同僚に見られたらどうするって話よ。だから、1ヶ月間の間にいいなと思った人に会おう。そして、その人たちの中から選ぼう。対面は怖いけど、でも、私を知ってくれて初めて付き合えるだろうし。よし、そうと決まったらこの1週間のうちにいいなと思う人を数人選んじゃおう。



***

そうして、選んだ人たちはこんな具合になった。

28歳 営業職 りゅうさん

31歳 自衛官 ひろくん

34歳 お菓子職人 りょうさん

37歳 経営者 こうじさん


 さて、みなさん。年齢を見ていただけますか? 実は全員3歳飛ばし(笑)。

正直、34歳の人は最後に決めた。他の3人を眺めながら、あと34歳がいたら3つ飛ばしなのになぁと思っていたら、ちょうどイケメンさんが申請してくれたものだから、ただの気まぐれOKってわけ。


 彼らとはチャットのやり取りをしながら、最低1回電話をした。チャットよりはるかに情報量が多いことがわかった。例えば、声。落ち着いた声やはたまた方言が拭いきれない話し方。笑うポイントなどなど。


 最初は緊張したが、気づけば友達感覚で話していた。やはり視覚がない分、気楽である。特にりゅうさんは歳が4つくらいしか違わないから、お兄ちゃんみたいな感覚だった。


 今思えば、そう。

もうすでにお兄ちゃん感覚だと思っている時点で、恋人にはなりえないだろう。

なのに、この時は、わからなかったんだ。


これが、経験の差ってもんじゃないのかな。


こうして、デートの日程をそれぞれの人と決めていった。


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