第27歩 『来る月曜日』

『紗代。ちゃんと木下陣にメッセージ送ったか?』

『ええ、送ったわ』


 木下陣とのメッセージのやり取りが証拠として紗代から送られてきた。

 『別れましょう』と一方的に紗代から別れを告げ、それに対して続けざまに送られる木下陣からのメッセージ。


『既読付けちゃったけど、返信しなくていいのよね?』

『ああ。寧ろ火種として働いてくれるさ』


 今日は月曜日。

 ────いよいよ、作戦を決行させる日だ。

 今頃、木下陣は紗代からの一方的な別れ話を告げられ傷付いているというより怒っていることだろう。

 冷静じゃない状態の彼へ、こちらから仕掛ける。


『お兄ちゃん、あの人、手紙に気付いたって』

『了解』


 雪に頼んで書いてもらった木下陣を呼び出す為の手紙。

 これで、準備は整った────……後は。


『後の問題は昼休み、あいつが体育館に来てくれるか。俺たちの計画がバレないか、それだけだな』

『体育館には来ると思うし、協力をお願いした人は厳選したからね。大丈夫だと思うよ』

『信じて待つしかない、か』

『うん、信じててよ』

『危なくなったらすぐ逃げるんだぞ』

『了解であります』

 

 なんだよその返事、と突っ込みを入れていると吉田さんが話し掛けてきた。


「うん、いつもとは顔つきが違うね」

「そんな良いもんじゃないさ。ただ、俺が想定していたよりも規模が大きくなって改めて吉田さんや冴島、あと紗代の凄さを思い知って怖くなっただけだよ」

「怖い?」

「ああ、この3人を怒らせたら怖い。……だから、正直木下陣に関しては何も心配してない。計画が順調に進んで成功する未来しか見えてない」

「フラグになりそうな発言だね」

「吉田さんは失敗すると思ってるのか?」

「ふふっ、全く」

「だよな」


 だから、俺の心配も不安も、木下陣の件が終わった、その後に向けられている。


「私が危惧していた、桐谷さんは、木下先輩に情報を流さなかった……そう見て良いのかな?」

「さあ」

「さあって」

「一応、紗代には計画の詳細を伝えてないし、吉田さんが探してくれた、あいつが付き合っている女子生徒の話もしておいたから、まあ大丈夫だろ」

 

 吉田さんには、木下陣に紗代以外の彼女がいないか、その人脈を使って探してもらっていた。堂々と2人で登校していた事から望み薄だったが、まさか、というか美喜多さんの時の件もあったから寧ろ想定通りだったんだけど、見つかった。


「他校の生徒まで手を出したあいつもだけど、それを調べられた吉田さんの人脈が怖すぎるよ」

「偶然だよ。運が良かっただけさ」


 友達がいた、それだけの事だと言う吉田さん。

 確かに、運が良かったと言えばその通りで、友達────即ち、他校の彼女の友達が、吉田さんに勇気を出して相談したそうだ。

 友達が彼氏が出来たと報告してくれた写真に映っていたのが木下陣だったと。

 紗代と付き合っている筈の今も尚、友達と付き合っていると。


「じゃあ、健闘を祈るよ」

「お互いにな」


 担任が教室に入ってきたタイミングで、最後の打ち合わせは解散となった。


               

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