第26歩 『慎重に順調に』
『おーけー!じゃあ手筈通り、SDカードだけ抜いて、ビデオカメラは元の位置にね』
『はい。すみませんが冴島先輩は引き続き監視をお願いします』
冴島先輩にビデオカメラを発見し、データ内容を確認したことをメッセージで伝えた。
ビデオカメラを再びぬいぐるみの中に戻すと、私たちは急いで木下家を後にした。
「これで、美野里ちゃんを襲っていた証拠が手に入った」
「うん......でもやっぱり、バレたら怖いなぁ」
「言ったでしょ、もしどこかでこの事を問い詰められて暴力振るわれそうになったら『このデータを音声だけばら撒く』って、逆に脅してやればいいって」
そもそも美野里ちゃんが常に誰かと一緒にいれば、木下陣に何か詰め寄られる事は無いから、そこは安心していいはずだ。
「お兄さんの方は上手くいったのかな?」
「さっき美喜多先輩から連絡があって、上手くいったみたい」
美喜多先輩はお兄ちゃん達と同じファミレスでいざとなった時に出てもらうようにしていた。
紗代さんの周りには誰がいるか分かったもんじゃなかったから。
「月曜日が楽しみだなぁ」
本当は動くのは明日の日曜日でも良かったのだが、木下陣が外出をする確実性がなかったことと、美野里ちゃんの両親が家にいると動きづらかったことを踏まえると安全性が乏しかったので、今日実行することにしたのだ。
ちなみに、美野里ちゃんは今日と明日は家に泊まることのになっていて、お母さんとお父さんには『三森ちゃんの親が2人共出張に行くことになって大変だから』と適当な作り話で誤魔化している。
後は、月曜日を待つだけ。
*
「ベラベラと話さなくてもいい事まで話して、どういうつもりですか?」
背後の席で待機していた美喜多さんから、呆れたような口調でそんな事を言われ、いまいちピンと来ていない俺が首を傾げると、今度はわざとらしく大きな溜息を吐いて、話を続けた。
「明日にでも退学させるって、堂々と嘘を言っているように聞こえましたが?」
「う、嘘じゃないから……本当に、やろうと思えば出来るから」
「出来ないじゃないですか。準備も整って無い上に、必要な環境をセッティングするのも平日の方が都合が良いと、そういう話だったはずです。違いますか?」
「……おっしゃる通りです」
「まったく……予定通りの結果になったから良いものの……気を付けてくださいね。あなたの勝手な行動1つで、計画が失敗に終わる可能性だってあるんですから」
紗代が木下陣に情報を洩らせば、当然、あいつは警戒して計画の軸に逸れた動きをする可能性が出て来る。
それを危惧する事は間違いじゃないし、正しい事なんだけど────多分、心配ないはずだ。
この計画が壊れて一番困るのは、紗代なんだから。
「向こうも問題なくデータの入手に成功したみたいです。今無事、帰宅されたそうですよ」
「よかった、二人ともなんともなくて」
2人だけであの家に行かすのは心配だったけど、冴島が見張り役に立候補してくれたおかげで、一番の不安要素を消せたのは大きかった。
冴島にメッセージでお礼を言っておく。
「残すは吉田さんだけか」
「ええ。ただまぁ、彼女の事は心配してません」
「……だな」
結果的には、帰宅途中に『見つけたよ』と吉田さんから連絡が来たから、本当に心配無用だった。
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