第18歩 『いつもと違う家の中』

 お風呂に入ろうとして扉を開けたら、着替え中の美野里さんに遭遇する────なんて、そんなお約束展開はもちろんなく(あっても気まずくなるだけだから要らないけど)、いつもよりも賑やかな夕飯を終えて、俺は、自室のベットで寝転がっていた。

 雪の様子はと言えば、昨日の事なんて、何事も無かったように振舞っていて、俺とも変わらず接してくる。


「お兄ちゃん、起きてる?」


 思考を遮るように、雪が、ノックもせずに部屋の中へと入ってきた。

 

「どうした?」

「昨日は、その……ごめんなさい!」


 表向きはそうは見えなかったが、どうやら、雪は雪なりに、昨日のことを反省していたらしい。

 

「俺の方こそ……謝らないといけないのは俺だから、だから────頼りない兄で、ごめん!」

「……お兄ちゃん」


 雪に笑顔を向けてやると、安心したのか、彼女も俺に可愛い笑みを見せてくれる。

 これで、スッキリした。

 

「美野里ちゃんが待ってるから戻るね!」

「ああ」


 何気に美野里さんの事を本名で呼んでるけど、まあ、いいか。


「あぁ、おやすみ」

「うん、おやすみ!お兄ちゃん」


 そのことに関しては一切触れずに俺の部屋を去っていった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

~雪 視点~


 お兄ちゃんにちゃんと謝ることが出来た私は思わず顔がにやけてしまう。


──よかった......けど、気を抜かないようにしないと。

 

 美野里ちゃんが木下陣の妹だと知れば、お兄ちゃんは紗代さんに関して色々聞くだろう。そして、美喜多さんの話と違う情報を聞いた場合、脳がパニックを起こして誰の話も信じなくなってしまうかもしれない。

 

 美喜多さんが紗代さんに言われたことが、まったくの嘘で紗代さんの意思で木下陣と付き合っていることを証明できる手だ私にはない。


 いや、あることにはあるが確証はもてない。


──木下陣をボコボコにするのは簡単なんだけど......。


 美野里ちゃんを襲った証拠がない。いや、もしかしたらあるかもしれないが本気で助かる気のない美野里ちゃんからそれについて聞き出すことは不可能だ。そんな状態で、彼を殴れば私だけではなく私の家族にまで迷惑を掛けてしまう。

 

──美野里ちゃんの覚悟しだいか......。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 雪が去ってから暫く経ち、彼女とのわだかまりが無くなった俺は安堵からか睡魔が襲ってきていた。

 すると、そんな俺の睡魔を払うように扉をノックする音がする。雪なら、そのまま入ってくるだろうから親が来たのかもしれない。


──でも、もう二人とも寝てる時間だよな?


 俺は、ノックだけされて開かない扉に違和感を覚えながら、ドアノブに手をかけて回す。すると、そこには消去法で導いてはいたがそれでも意外な人物が立っていた。


「すみません、お兄さん。少しだけ.....お話がしたくて」

 





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