第17歩 『予想外の訪問』
玄関で話し声が聞こえて、気になって様子を見に行くとそこには雪とものすごく見覚えのある女の子が立っていた。
「あ、お兄ちゃん。ただいま」
「あぁ、おかえり。……その子は?」
「ほら、自己紹介して?」
「うん。えっと、初めましてお兄さん。私、
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~雪 視点~
先日。木下陣の妹でクラスメイトの、木下美野里ちゃんに話を聞いた。
彼女に関する噂を耳にしたからだ。
『木下美野里は兄に対する嫉妬で、兄から性暴力を受けているとデタラメを言っている』
美野里ちゃんはみんなに助けを求めていたみたいだけど、兄の優等生っぷりに誰もそれを信じずに、デタラメとして処理されてしまったのだ。
木下陣の妹だからなのか、直接的ないじめはないが、本人のいないところで悪口を言っているクラスメイトを何回か目撃した。
それが原因で、彼女は誰にもこのことを相談しなくなり自分が我慢すればいいだけの話と一人で抱え込んでしまっていた。
だから私は手を差し伸べたんだ。なにも間違ったことをしている訳じゃない、何も悪くない美野里ちゃんを助けるために。
もしかしたら、美野里ちゃんは私のことを信じていないのかもしれない。それでもいいんだ。彼女を助けることが出来るのであれば。
「おまたせ!ごめんね、遅くなって」
「大丈夫だよ、じゃあ行こっか」
待ち合わせ場所で美野里ちゃんと合流して、私の家に向かう。一緒に帰らずに、学校外を集合場所にしたのは美野里ちゃんの希望があったからだ。
「一緒に帰るとこ見られたら、雪ちゃんが勘違いされちゃう」
「私なら、大丈夫だけど?」
「いいから!」
クラスの女子の大半は私に何かすれば、それ相応の仕返しが来ることなんて分かっているはずだから、問題はないのだけれど。
「ありがとね、本当に気が楽だよ」
「まぁ、そんな生活していたらね。今日はゆっくり休むといいよ」
「うん」
私の家に木下陣が押しかけてくることはないだろう。
────なるべく、木下先輩の話題は出さないようにしないと。
「そうだ、お兄ちゃんに木下先輩の妹ってバレるとめんどくさいから、偽名を使おう」
「えっ......でも」
「妹ってバレたら、何されるか分からないよ?」
実際、お兄ちゃんは暴力なんかは振らないだろうが、紗代さんについて情報を聞き出したいという衝動に駆られてしまうはず。美野里ちゃんの休息の時間を脅かすわけにはいかない。
「えぇ?!じゃあ......」
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~美野里 視点~
────ちょっと待って!この人、雪ちゃんのお兄さんだったのぉ?!
彼がなぜ兄をあそこまで恨んでいたか、私の話を簡単に信じたかが分かった。
────お兄さんも気まずそうにしてるし、どうしたらいいの......。
「えっと、雪の兄の紅貴です。よ、よろしく」
「もう!お兄ちゃん相変わらず人見知りきもいよ」
「う、うるせぇ......。そんなんじゃないやい」
「はいはい。三森ちゃん、手洗いうがいしよっかぁ」
「う、うん。お邪魔します」
お兄さんが何か言いたそうな顔をしていたが、それを無視して雪ちゃんは私を手を取りながら洗面台へ進んでしまった。
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