第3歩『予想通りの教室内』

 覚悟を決め、教室に入ると反応は男女で別れていて、女子は気にした様子は無く、男子からは睨まれた。

 ただ男子の中でも、リーダ的存在である冴島さえじまと、冴島と話している男子だけは、変わらず談笑を続けていた。

 この視線に対してどう反応するのが正解かが分からないまま、自分の席に座ると「おはようございます」と隣の席の住人から挨拶をされた。


「おはよう、美喜多みきたさん」


 いつも通りの隣人に安堵する。

 美喜多さんとは同じ図書委員に所属したのがきっかけで話すようになった数少ない友人だ。


「本日はどんな本をお読みで?」

峰山みねやまくんに説明したところで到底理解出来るような作品では無いので説明する時間が無駄です」

「教えてくれるまで引かないって言ったら?」

「はぁ……」


 仕方がない、とタイトルだけ教えてくれた。

 それさえ分かれば今度図書室で借りて読むことが出来る。

 美喜多さんが読む本は確かに難しい本が多いが、それでも読んでみれば面白いから、また楽しみが増えた。

 

「あまり熱心見つめられてると照れます」

「真顔で思っても無い事言うなよ」

「鬱陶しいので見ないでください」

「美喜多さんの優しさに涙が出そうだよ」


 それにしても、と教室を見回す。

 誰もオレが美喜多さんと話してても何もしてこないし、男子数人から問い詰められる事も覚悟していたんだけど何もない……オレを見る視線も明らかに減っている。

 肩透かしと言って良いのかは分からないけど、色んな心配が杞憂で終われば良いけど。




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