「別もの注意」

 偽物だ。

 見た瞬間わかってしまった。


 誕生日プレゼントに彼が買って来てくれたブランドもの。

 好きでよく知っているのに加え、騙されまいと偽物を恨み調べていたから。

 気付いてしまった。


「君が好きなブランド。同じの持ってないと良いんだけど」

「あ、ありがとう」


 どうしよう。

 気付かなければ問題なかったのに。

 笑顔がぎこちなくなってないだろうか。


 彼からのプレゼントを喜びたい。

 あぁ、でも。

 彼は偽物だなんて思ってもいないんだろう。


 何の陰りもない笑顔でこちらを見ているのだ。


 ここは円満に気付かれないようにするのが正解か。

 それとも、悪戯っぽく笑って注意した方が良いのか。


 私にそんな演技力あるだろうか。

 歓声と共に箱をあけ、その後声のトーンは下がっていないか。


 偽物め。

 まさか、こんな最悪の形で邂逅する事になるとは。

 手元の箱をくしゃくしゃにしてやりたい。


 っと、まずはリカバリせねば。

 これが原因で破談になっても困る。


 数秒。

 やり過ごす事に決めた。

 ニコリと笑顔を作り、顔をあげれば。


「え?」


 彼が二人居た。


「ど、どういう事!?」


 一人は座っていて私にプレゼントを渡した彼。

 もう一人はその隣に立って困ったような顔をする彼。


 いつの間に。

 双子だったのだろうか。


「やっぱり、君はブランド物しか見ていなかったんだね」

「え?」

「その偽物にはすぐ気付いたのに、僕の偽者には最後まで気付かなかった」

「えぇ?」


 あ、隣で立っているのが彼か。

 座っているのは一体誰?


 え、でもこの彼と今日はデートしてここに来たはず。

 入れ替わったの? はじめから?


 そうやって混乱しているうちに私はフラれていた。

 どうしてこんな事に。


 とにかく、私はより一層偽物が嫌いになった。


 新しい彼たちから貰うブランドものに偽物が混じっていたら即キレるほどに。

 絶対に、偽物は許さないのだ。

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