「差は生まれる」

 世の中に同じものは一つもない。

 量産品だろうと数ミリ単位のずれがあったり、そもそも素材の段階で密度に違いが出たり、許容範囲内で違いが出る。


 だからその後の検品で弾くだとか。

 同じラインなのに不良品が出るだとか。

 逆に想定より良質のものが当たりと言われるだとか。


 で、その当たりを見つけるのが俺の仕事ってわけ。


 ダースでやってくる品を見て、良質なものを見極める。

 これがなかなか大変だ。


 微細な違いを外から見ただけでわかるはずもない。

 ミリ単位の変形を定規やら水平器で調べ、歪みがないかを見て。

 ハンマーで叩いて材質の偏りや空洞のチェック。


 結局最後は人の手で見ないとわからないのだから、面倒な事だ。

 何百、何千と生産できるようになったというのに。

 こちらのチェックもどうにか自動化して欲しいものだ。


 そうなると仕事がなくなるわけだが。


 もうちょっと給金を増やしてもらえればこんな不平も。

 いや、こんな仕事なくなった方が世のためか。


 そうは思えど、毎日品質チェックは止まらない。


 ピックアップされた精度の良いものは別の道へ。

 貴重品の照準器をつけ、狙撃用として。


 同じように品質チェックされ、狙撃に適性のある者の手へ渡り。

 誰かの命を奪っていく。

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