「4だとか13だとか」

 不吉な数字というものがある。

 4だとか13だとか666だとか。

 それぞれの文化圏で、死だとか不吉な文字や伝承に関わるもの。


 それと類似するだとか音が似ているから不吉なのだという。

 「3」「4」「5」「9」「13」「14」「17」

 数字だけでこれだけあるのなら、世界の忌み事を集めたらキリがない。


 要するにジンクスなんてものは誰にだってあるのだ。


 だから、これは誰にでも起こり得る問題。

 形が違うだけで、誰だって不吉な物は避けるだろう?


 世界ほどではないが、俺にも複数あって。

 それが重なる偶然だってある。


 信心深い方じゃないが、なんとなーく嫌なんだそれが。

 だから今頭を抱えている。


 まず靴紐が解けた。

 切れたら不吉と言われるが、そうそう切れるものでもない。

 よって自分の中ではその下位互換である靴紐が解けるという現象は不吉扱いだ。


 いや準不吉くらいか?

 あまり良くない。普通に面倒だし。


 そして靴紐を結ぼうとかがんで見えた腕時計。

 午後「4時44分」の表記。


 見てしまった。

 特に何があるというわけでもないのに、何となく嫌な気分になる数字の並び。


 そして視界の隅に黒猫。

 いやいや、実は黒猫は幸運なんですよ。

 その幸運の猫がそっぽを向く、横切って行ってしまうから不吉の兆しになるわけで。


 まぁ今完全に無視されて離れて行ったんですけど。


 その時点で三つ。

 三つも連続で来たら、いよいよ三度目の正直。


 何か悪い予感やら不安やら。

 冷や汗までかいてくる。


 気にし過ぎかもしれないが、一度気になったら頭から離れない。

 ついつい靴紐を結ぶ手も止まっていた。


 落ち着け。

 こんなのただの偶然だ。

 何の因果もない。


 あ、思い出した。


 朝見た星座占い、最下位だったわ。

 そういえば家出る時、携帯落として画面割れたわ。


 あと朝ごはん片付けた時に、素足で固まった米粒踏んだわ。

 今日は絶対ついていない日だ。


 何故だか泣きたくなって来て、涙を堪えながら靴紐を結びなおす。

 よしっと立ち上がれば。


 ちょうど後ろから来た車がクラクションを鳴らしていた。

 嘘だろ?


 轢かれる。

 そう思った真横を車が走り去り、罵声と水たまりの汚水を浴びせられた。


 やっぱりジンクスとか運勢とかあるかもしれない。

 ただ、気にしていちいち足を止めていたらもっとババを引きそうだ。


 そう思う休日の午後だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る