「言いたい事~Happy Valentine~」

 言葉って難しい。

 ただの記号のはずなのに、そこに想いをのせた途端、特別なものとなってしまう。


 自分の中にある気持ちと向き合って、言葉を選ぶ。

 これでもない。あれでもない。


 悪くないけど。

 この衝動を表すには物足りない。


 間違いないと選ぶ度に、それは色褪せる。


 どれも私の想いと比べれば圧倒的に足りない。

 言葉も文字も、力不足。

 出直して来て欲しい。


 何百年と歴史がある癖に、重みというものがない。

 日用的過ぎる?


 なら古語とかいう奴はどうだろう。

 そう思って古典のページを開く。

 パタンと閉じる。


 ふー、何も伝わらなかった。

 言葉って、お互いに事前知識がないとダメよね。

 いとをかしって何?


 段々考え過ぎてわけがわからなくなって来た。

 げしゅたると崩壊と言うらしい。

 崩壊しそうなのは私の精神力だ。


 頭がぐるぐるするし、疲れ果てた。

 甘いものを補給しよう。


 私はビターブラックな一粒を口へと放り込んだ。


 ううーん、大人な味わい。

 すぐに舌の上で溶けて濃厚な香りが広がる。

 濃い。このインパクトが大事。


 結局添える言葉は見つからなかった。

 どれもしっくり来ないのなら仕方がない。


 渡すことはもう決めているのだから。

 あとは実行あるのみ。


 もう一粒食べちゃったけどね。

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