「衰退の先」
物音すらない寂れた一角を、冷たい風が吹き抜ける。
侵略だとか、最終戦争だとか。
劇的な何かがあったわけでもない。
ただ何となく、じんわりと確実に意欲というものが失われた。
出来る事は増えたはずだし、雑務は命令せずとも片付けてくれる。
適度な負荷や煩わしい事こそが創意工夫の元だったのか。
答えは何処にもなかった。
あるのは緩やかな死。
それすらも回避しようという気概がなくなっていた。
数が減れば出会いもなく、新たな子も生まれない。
子のない世に、新たな子を送り出すのも気が引ける。
もう良いだろう。
静かに暮らしたい。
その想いは尊重された。
雑務担当が終活を。
厳かに、儀式的に飾りたててくれた。
敬われている。大事にされている。
その実感が、寂しさを和らげてくれた。
「さようなら、この星の子らよ。あとは頼みましたよ」
彼らにどれほど伝わったのか。
頭をたれる裸の者たちが黙祷を。
あとは彼らの手で石棺に納められるだろう。
子は続かずとも、文化は残せたのだと。
異星からの訪問者たちは眠りにつくのだった。
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