「中身の話」
「例えば、この箱の中身を外側から知ろうとした場合いくつの方法があるだろう」
教授がそう言うと、生徒の一人が素早く手をあげる。
端正な顔立ちは自信に満ち溢れ、乱れ一つない服装はいかにも知性を感じさせる子供だ。
教授は頷いて先を促す。
「金属製でとても頑丈そうな箱です。蓋も見当たりませんが、そうですね。工業化の水圧カッターなら開けられると思います」
「いや開け方を聞いているわけじゃないんだ」
「何故ですか。箱を開けた所で中に入るわけではない以上、それは外側から見ていますよね?」
教授は頭を振った。
生徒は不満そうだったが違ったかーと素直に座りなおす。
「はい先生」
「おや、何か思いついたかな?」
「難しい問題だと思いました」
「いや感想を発表する場じゃないんだよね」
「じゃぁ先生は何を求めているんですか」
教授が持っていた箱を教壇の上に起きて、両手をついて教室を見渡した。
何人もいる生徒は皆不思議そうにその様子を眺めている。
「例えば、この中身を知る方法だけでも君たち一人一人、違った方法を思いつくかもしれない」
「その可能性はありますね。僕は透ける眼鏡が欲しいなって思いました」
「そしてどの方法が良いのかという意見交換や議論が出来たかもしれない」
「なるほど。しかし私は一つも思いつきませんでした!」
教授は大きなため息をついた。
とはいえ、このクラスを任されて一日目である。
ここからどんな授業をしていくか方針くらいは出来た。
少なくとも先ほどのやり取りで、生徒たちの頭の中身は知る事が出来たのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます