「月の夜に」
月夜の晩は気を付けて。
白銀のもの。黄金と対をなすもの。
黒き空にぽつんとひとつ。
lunatic lunatic 狂気の色合い。
御妊婦様は御用心。
見上げた先に、まるまるとした月が浮かんでいる。
虫の音の中、涼しくなって来た夜に。
縁側に座って。
こうなると団子が欲しい気がしてくるのだから不思議だ。
月見だなんて、これまでまともにした事もないのに。
刷り込まれたイメージなのか、そういうCMだとかが増えるせいか。
まぁせっかくだし、楽しむのも一興だろうと妻を呼ぶ。
日本文化というものを知る良い機会だ。
そう思ったのだが、NOと断られてしまった。
何だというのだろうか。
別に必ず付き合わせようだとか、これを重要な行事だとか思っていたわけではないのに。
そこまで拒否されると少し意地になってしまう。
あーだこーだと理由をつけて語り。
半ば強引に、けれど身重の負担にならないよう手を引いて縁側へと座らせる。
根付いた文化というのは抗いがたいものなのかもしれない。
大事にしていたわけでないのに、つい熱弁してしまった。
これも月の魔力だろうか。
そういえば、妻の生まれ育った国にも月にまつわる伝承があると言っていた気がする。
彼女もそうした文化に引っ張られる事があるのだろうか。
二人で見上げた月は、それはそれは見事な満月で。
ぼんやり見惚れていると、みしりと床板の鳴る音がした。
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