8 sideレイナ


 旅立ちの日、神官様は神託をくださった。

『魔王を倒し英雄となった者こそ、聖女を生涯守る騎士、つまり伴侶となる』


 そしてハルはわたしに言った。

『俺は魔王を倒し、英雄になる。英雄になって聖女レイナと結婚するにふさわしい男になる』


「それなのにハルったらひどい!」

『英雄とかなりたくねええ!』ってどういうこと?! 


 魔物を倒せばアイテムが出るのは当然、それを集めるのも当然。

 なんでも全力に完璧にやってこそ魔王を倒すその日に備えられるんだから――。


「って魔王倒してるわ!!」


 そう。

 死闘の末、わたしたちは魔王バルバドスを倒した。

 けれど倒したと思ったバルバドスが最期の魔王的力を発揮して暴れそうになったのを聖剣クサナギがトドメを刺してを振り飛ばして――わたしたちはこの異世界に召喚されたのだわ。


 あれ?


 ちょっと待って?


 ということは魔王バルバドスにトドメを差したのは聖剣クサナギということになって――。


「つまり英雄は聖剣クサナギ……わたしの伴侶は聖剣クサナギってこと?! いやああああああ!!」


 オネエしゃべりとかなんとかいう前にヒトですらないじゃない!!


「これはなんとしてでもハルにもう一度魔王にトドメを差してもらわなければ!!」 

 わたしの魔力を結集して、集めたアイテムでワープクリスタルを作れば……魔王との死闘の直前に戻れるはず。


「そのためにはこの異世界でやっぱりせっせと魔物を倒してアイテムを集めなくちゃ!」


 この異世界でもさっきのようにダンジョンは突如出現するみたいだものね。

 これはますますハルと昼も夜も離れずに一緒にいる必要があるわ。


 今朝の戦闘、なんだかハルの戦闘能力が格段に落ちている気がしたの。

 これから魔物と戦って魔王と戦えるレベルになるまでわたしがフォローしないと。


 たぶんハル、死んでしまうわ。


 この異世界に神殿があれば白魔法で蘇生できるけど、学校に来るまでの間は少なくとも神殿はなかったし。

 うん、そうしよう。


 そういえばそろそろお昼休みね。ハルを探さなきゃ。

 チャイムが鳴ったわね。教室からたくさん人が出てくるわ。

 ハルの気配をたどると――人がたくさん入っていく場所だわ。ここは食堂かしら?


……っていたわ! 

 あんなところで楽しそうに並んでる! もうっ、わたしを置いていったらダメじゃない!




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