7 そこ泣くところ?! 


 こうして、オレの平和で退屈で生温かい高校生活があっけなく崩れ去った。

 いや傍目には崩れてないどころかむしろリア充で輝いて見えるのだろう。

 オレを見る男どもの針のような視線が痛い。


 だが! しかし! 落ち着けおまえら!!


 休み時間、制服のポケットにヘンな骨つっこまれるオレの身にもなってくれよおおお!!


「おい何入れてんだよ」

 銀髪碧眼美少女の手がポケットに入った時点で周囲から殺気をひしひしと感じるがそれどころじゃない。

 レイナはリレーのバトンみたいな物を何本もオレのポケットにぎゅうぎゅう押し込んでいる。おいみんなガン見してるけど大丈夫か? いろいろとまずいと思うんだが?

「さっきのゴブゴブリンが落としていったアイテムよ。ゴブゴブリンの骨。合成に使うでしょ? ハルったら拾うの忘れてたよ?」


 オレは頭を抱えた。


「待て待て待て待て。ここは現実リアルだぞ? なんで魔物倒したりアイテム集めたりする必要があんだよ?」

「英雄になるためでしょう?」

 当たり前のことを聞くなという風にレイナは呆れ顔をする。

「魔物を倒してアイテムを集めて調合とかして、気たるべき魔王決戦に備えるの。勇者は魔王を倒して英雄になるんだから」

「英雄とかなりたくえねええ! オレは日本の普通の高校生だ!!」

 オレが訴えると、でっかい宝石みたいな瞳がみるみる潤んだからビビった。

「ひ、ひどい……!」


 ええっ?!

 なんで?!

 そこ泣くところ?!


「ハルのバカ!!!」

 レイナは走って教室を出ていってしまった。

 刹那、マイナス200度かよってくらいの冷気がオレを包む。


「晴人……おまえって奴はぁあ!!!」

「うわちょ待っ、オレ悪くねえし! なんで!?」

「なに言ってんのよボケ!! レイナちゃん泣いてたじゃん!!」

 本日二度目の親友の猛攻+クラス中の男どもとなぜか女子たちまでオレを非難するという状況。

 オレが泣きたいんですけど……?

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