5 ゴブゴブリンが現れた!
オレはレイナに腕を取られ、その腕がレイナの豊満な胸に押しつけられていることに動揺して「ちょ、ちょ待っ、心の準備がっ」と叫んだのだが。
「ハル!! クサナギを召還して!!」
なぜオレのゲームでの名前を知っている?!
とか聞く暇もなく、オレは周囲の空気が変わったことに気付いた。
なんか囲まれてる!!
直径五十メートルくらいの円の中心にオレとレイナはいる。
遥か向こうにはぐるりと住宅街の風景が広がっているのに、透明な壁で区切られたようにここだけぽっかりと周囲から切り離されている。
そのワケをオレは瞬時に悟った。
『ぐるうるるるる……』
「ゴブゴブリン?!」
ブタのような顔。だらしなく垂れた涎。醜い矮躯。
『エデンの砦』に出てくる超低級の魔物ゴブゴブリンだ。
ザコ中のザコだが群れで襲ってくるため厄介で、レベルが上がっていない頃は囲まれてボコボコにされて悔しい思いをしたものだ。
懐かしいなあ……
と感慨にふけっていたオレはいきなり胸倉を揺さぶられて我に返る。
「ハル!! さっさとやっつけちゃって!! でないと学校に遅刻する!!」
目の前にはレイナの整いすぎた顔が近すぎてヤバいと思ったらそのすぐ後ろから三匹の子豚……じゃない三匹のゴブゴブリンがブタ顔に似合わない牙を剥きだしにして迫ってきた!
「ぬえええええ?! マジ?! これリアル?! やばっ、やばいって!!」
『ぐぉおおお!!』
「だから早くクサナギ召喚しろって言ってんでしょうがこのへっぽこ勇者!!」
今なにげに聖女レイナひどくない?!
「クサナギ!!」
オレが叫んだ刹那、右手にしっくりくる感触と共に光芒が出現。おおっ、まじ『エデンの砦』っぽい!
『お待た~♡』
って台無しだ!!
いろんな涙を心で流しつつもオレはクサナギを一閃する。
「ソードビーーーーーム!!」
わあ。一度リアルで言ってみたかった厨二病的なこのセリフ。これじゃ近所の小学生だろ。
って思ったけど、なんと三匹のゴブゴブリンは断末魔の叫びを上げ、あっさりと霧散した。
「うっそ……」
あんな厨二病的セリフでどうにかなったのか?
本当にゲームの中みたいにソードビーム放ったのか?
ていうか、オレ、まだ夢見てる? 実は家のベッドで寝てたりして……
「ふう、おつかれおつかれ。じゃ、学校行こっか!」
気付けば周囲の風景は元通りになっている。
そして再びオレの腕を取った聖女レイナの巨乳の感触もちゃんとある。
オレは寝てない。これは夢じゃない。
リアルだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます