4 sideレイナ


 わたしは聖女レイナ。

 ついさっき、この異世界に召喚された。


 なぜかって?


 激闘の末倒したはずの魔王バルバドスが悪あがきして、聖剣クサナギが吹き飛ばされたから。


 聖剣クサナギは無意識に主である勇者ハルを追って、この異世界に引き寄せられたみたい。

 で、直後、なぜかクサナギったらはわたしのことも召喚したのよね。

 その理由ワケは――わたしは勇者ハルを目の前にしてわかった。


 勇者ハルは、すっかり記憶を失くしている。


 目の色も髪の色も変わってしまってちょっと小さくなったような気もするけれど、この方は間違いなく生死を共にして戦った勇者ハル。

 それなのに……



 永遠の愛を誓ったこのわたしを忘れるってどういうこと?!



 わたしの姿をみてぽかーんとしているハルを見て思ったわ。

 あ、詰んだ、って。

 でもわたしは聖女レイナ。困難な状況でも決してあきらめない。



 忘れているなら思い出してもらうまでよ!!!


 

 ぜったいにハルにわたしを思い出してもらう!



 だってひどくない?! 魔王を倒して勇者から英雄に格上げしたら君と結婚するってあんなに甘々にささやいてくれのに!!


 もう花嫁衣装も注文しちゃったのよ?!

 王都の教会に式の日取りも連絡しちゃったのよ?!


 何がなんでも思い出してもらうわ!!


 聖女のわたしは異世界へ召喚されるとき、ばっちり脳内チュートリアルも完了している。この世界で普通に生活するに困らない知識はある。

 だからわたしは焦っているの。

 だってこの世界ではこの時間、ぜったいに学校に行かなくてはならないのよ!


「もうっ、そんなこと後でいいからとにかく学校に行くわよ! 遅刻しちゃうじゃない!」

 わたしはもの言いたげなハルの腕を取って歩き出す。


 そのときだった。


 周囲を取り巻く空気が反転した。

 わたしたちのいる周囲半径二十メートル以内が不可視の壁に囲われ、この世界から切り離される。


「ハル!! クサナギを召還して!!」

――ダンジョン出現。

 どうやら、ハルに引き寄せられるのは聖剣クサナギだけじゃないみたい。



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