2 聖女が制服着てるんですけど


 バルバドス。

 それはオレが昨日までやりこんでいたRPG『エデンの砦』に出てくるラスボスの魔王。

 昨日七時間に及ぶ激闘の末、倒したばかりだ。

 王国アトランティアに明るい陽射しが溢れ、人々に平和な生活が戻ってきたシーンは感動的だった。ついでに現実の窓の外が明るくなっていたことにも感動したが。


『そうよぉ、バルバドス。世界征服を企んだ憎き魔王。もぅ勇者様は麗しくて強いんだけど優しいからぁ、あの魔王、しぶとく息があったみたいでぇ。ま、あたしがトドメを差しておいたけどね!』


 得意げにしゃべる剣を放置し、そろりそろりとその場を離れ始める。


 オレは平和を愛する男だ。面倒なことはごめんだ。ことなかれ主義けっこう。何もない退屈で平穏な日常が最高だ。


 ていうか早くこの場を離れないとマジで遅刻する。


『貴方は麗しの勇者様と同じ匂いがするのぉおおおお!!!』

「寄るなっ!!」


 びゅん、と剣が飛んできてオレの目の前に浮いた。


『今日からあたしは貴方の僕よ♡ 遠慮しないであたしの主になってちょうだい♡』

「遠慮とかしてないし勝手に決めるな!」

『ああら、あたしが勝手に決めたんじゃないわよぉ』

「じゃあなんなんだ!!」

『レイナー、説明してやってちょうだい』


「はいは~い」


 可愛らしい返事と同時に目の前がキラキラキラーと光り、銀髪碧眼の女が現れた。


「うそ……聖女レイナ?!」


 それはほんの数時間前『エデンの砦』で一緒に生死を共にした主要パーティーメンバーの一人、聖女レイナだった。


 絹糸のような長い銀髪。サファイアのような青い瞳。透けるように白い肌。整った顔立ちに極上の微笑み。

 実際いたらこんな美少女、というレイナそのものが目の前に立っている。


 だけど……


 なぜオレの学校の制服を着ている?!

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