第22話

 捜査0課の捜査チームが現場指揮を執っている捜査本部を傍目に、旧龍ヶ崎工建の前に停めたままのバイクに乗り込む。

 車体規制を無視したバイクであるが、それについて何も言及することなく0課は自分たちの任務を遂行している。

「シャロ、真水がどこに居んのかわかってんのか?」

 来た道を戻る最中、ワットソンは迷いなくバイクを走らせるシャーロックに聞く。

「ああ、あいつは最初からみこを狙っていた。だからオレたちや0課の目を欺くためにああいう書置きをわざとおいた。そしたら案の定みこがそれを鵜呑みにしてオレたちに依頼してきた」

 真水自身が容疑者として警察に身を追われている以上、直接干渉できなかった。それを逆手に取り、娘であるみこを利用して自身のいる場所とは別の、ダミーの場所に白雪を誘拐した。

 その結果、大して有用性のない資料や、最初から誘拐の為だけに用意したダミーの研究施設にシャーロックや警察の目をそこに向けさせた。自分は本当の目的のために捜査0課の手薄となった比翼市の市街地で活動できるようになった。

「だから、本物の拠点は比翼市内にある。これはわかっているが細かい場所はわからん」

 シャーロックは潔いくらいに言い切った。はっきりと細かい場所がわからないと言うが、実際にはある程度絞り込んでいた。

「そんなんでどーやって見つけるんだよ」

「簡単だ。あのシガレットケースがあるだろ? それを使う」

 ワットソンはさっき見せられたシガレットケースを思い出す。

「あれを何に使うんだ?」

 あれを何に使うかわからない。前にシャーロックがサヴァン因子の研究資料としてワットソンに見せた。その時はサヴァン因子の活性化に使えると言っていた。

「あれの匂いを辿る」

 シャーロックはシガレットケースから錠剤を取り出し、飲み込む。

「っ! きついな」

 臭覚関係の強化により、外の臭気情報が一気に流れ込む。一瞬その情報量に意識が遠のきながらも、極々微細な匂いからから同じサヴァンの匂いを感じ取った。

「いた。こっちか!」

 バイクを90度捻り、その方向に走らせる。

「おい、こっちって」

 比翼市のメインストリートから外れ、街の雰囲気が変わってきたところでワットソンが声を上げる。ワットソンが何かに気づいたようだ。

「ああ、真島研究所の跡地だ」

 真島研究所に所属していた紫水真水であれば、この研究所跡地に出入りすることは容易だろう。その結果被疑者となった紫水真水の潜伏先として機能していた。

「場合によっては、組織のやつらが実験を行う場所として利用している可能性もあるな」

 強襲用バイクの速度は法定速度を超え、車体の最高速ギリギリのスピードで目的地へと走らせる。時速100㎞を超えたバイクで市街地を走らせているが、高速道路やレースサーキットではない市街地で、信号をすり抜け、市民を避けながら目的の場所に減速をほぼすることなく操縦できるのは、間違いなくサヴァンの影響である。

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