第16話
白雪みおんを誘拐したハイエースを尾行するように追いかけるのではなく、側道から観察するようにバイクを走らせながら、ワットソンとの合流ポイント付近に急ぐ。
「お、いたいた」
合流地点の手前でワットソンは待っていた。60㎞/hで走っているシャーロックが運転するバイクを目視すると、走りながらバイクが自分の近くまで来るタイミングを待つ。
(跳び移る気かよ。停めるより速度落とさなくて済むが、マズいだろ)
シャーロックはワットソンの不思議な動きから何をしようとしているのかを察する。バイクの速度を緩やかに落とし、40㎞/hまで落としワットソンが跳び乗りやすいようにする。
「…………、ヨッと!」
ワットソンが並走している僅かな時間でバイクに跳び乗る。グラッと車体が揺れるが、シャーロックがハンドリングで無理矢理車体を安定させる。
「っ、無茶なことさせるな」
「わりわり。それにしても、なんで裏通ってんだ?」
無理矢理シャーロックの運転するバイクに跳び乗ったことから、すこしシャーロックが苛立ったように答える。
「発信機があるから裏からで十分だ。それに背後を追跡するよりも裏からの方が探られにくい」
シャーロックにも策があった。本体を叩くために、泳がせる必要があった。そのためにリスクを承知で発信機を付けさせたのだ。
「わーってるけどよ、それにしては向こうの動きが怪しくねえか?」
ワットソンの言う通り、誘拐犯の方は真島研究所とは逆の方に向かっていた。
「真島研究所じゃないってことか」
研究所に行くと予想していた誘拐犯の動きは異なっていた。研究所ではなく別の方面に向かっているということは、紫水真水が所属していた真島研究所を抜け、別の組織に入ったということになる。
「橋を渡るってことか?」
ワットソンが不満そうな面持ちで、シャーロックに問いかける。
「だろうな。このまま行くとなると比翼大橋を越えるだろうな」
比翼大橋を越えるということは、橋の向こう側の探偵たち
「捜査0課よりも権力が強いから、殺害不可みたいなものだが、今回は最悪救出以外のことは和光たちに任せるとしよう」
追跡しているハイエースは比翼大橋を越えようとしていた。その先にある研究施設もシャーロックは念のために調べていた。
裏道を走っているシャーロックのスマホを操作し、発信機の付いているハイエースをナビゲーション対象にすると、比翼大橋とは別の橋、車一台が通り抜けられる程度の橋を渡る。
「ワット、和光に連絡だ」
「わかったのか?」
シャーロックは頷くと、目的地をワットソンに伝える。
「本当に、んなとこにいるのかよ?」
おおよそ禁忌理論の研究者としてありえないような場所に潜伏していると断定していた。しかし、ワットソンはシャーロックの言っていることを信じて、和光にその場所を伝える。
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